ソング・オブ・ラホールの映画専門家レビュー一覧

ソング・オブ・ラホール

タリバンによって禁じられた音楽文化を取り戻すため、ジャズに挑むパキスタンの伝統音楽家たちを追ったドキュメンタリー。伝統楽器を用いてジャズの楽曲『テイク・ファイヴ』をカバーした彼らがニューヨークに招待され、ビッグバンドと共演するまでを見つめる。監督は、『セイビング・フェイス 魂の救済』、『A Girl in the River: The Price of Forgiveness』で2度、アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞したシャルミーン・ウベード=チナーイと、本作が初監督作となるアンディ・ショーケン。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    カメラはザ・サッチャル・アンサンブルの練習風景を丹念に捉えていく。イスラム原理主義の圧政によって活動を妨げられたあげく、彼らは民族楽器でデイヴ・ブルーベックの超有名曲〈テイク・ファイヴ〉をカバーしてネットに投稿、これが世界中で大評判となり、本場ニューヨークのジャズ・フェスに招かれる。たとえ彼らのブレイクが悪しきオリエンタリズムの産物だったとしても、「全世界に知って欲しい、パキスタン人は芸術家でテロリストじゃないことを」という言葉には感動した。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    音楽ドキュメンタリーの見方がいまだわからないという個人的な課題がまたもや試される。本作では政府やタリバンによって抑圧されたパキスタンの音楽の歴史が背景にあり、その情報をふまえながら、困難に負けず活動を続けてきたミュージシャンたちが様々なハードルを乗り越えてステージに立つ過程を見守ることができる。パキスタンの伝統音楽とジャズとの融合という音楽的なチャレンジもあり、非常にドラマティックな題材で演奏も素晴らしく、全く不満はないのだが、それゆえに課題の解決は持ち越された。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    消滅の危機にあるパキスタンの伝統音楽の演奏家たちがジャズに最後の活路を求める。ウィントン・マルサリスに招かれニューヨークの檜舞台を踏むが、本番直前までごたごたが続く。リハーサル中、終始厳しい表情を崩さなかったマルサリスの顔に、本番が始まるや会心の笑みが浮かんでくる様はドラマティックだ。演技ではないだけに、彼の存在感は絶大だ。役者そこのけ!ドキュメンタリー映画だが、まるで昔ながらのミュージシャンの成功物語のような心地のよいハッピーエンドだ。

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