シーモアさんと、大人のための人生入門の映画専門家レビュー一覧
シーモアさんと、大人のための人生入門
俳優のイーサン・ホークが自ら監督を務め、89歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインの魅力に迫るドキュメンタリー。一流のピアニストとして活躍しながらも、50歳で現役を引退、その後をピアノ教師として生きたシーモアの波乱の生涯が明らかになる。数々の経験を重ねて辿り着いたシーモアの温かくシンプルな生き方は、今を生きる人々に大切なことを教えてくれる。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
邦訳書も多数ある世界的に高名なピアノ教師であるシーモア(セイモア)バーンスタインの人物ドキュメンタリー。演奏テクニックだけでなく、ピアノに向かう姿勢、音楽に対する態度を重視する教育スタンスは、監督イーサン・ホークが魅せられたように、汲めども尽きぬ含蓄と説得力を持っている。ほぼ最初から最後まで、ずっとシーモアさんが喋っているのだが、幾らでも聞いていられる。それは彼の話が興味深いから、だけではなく、彼の表情が、物腰が、なんともフォトジェニックだからだ。
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映画系文筆業
奈々村久生
シーモア氏は才能ある演奏家で作曲家であり、その人生はそれだけでも語られる魅力が十分にある。だが89歳になる彼のドキュメンタリー映画はこれまでなかった。ではイーサン・ホークはなぜこの映画を作ったのか。彼が個人的に抱いていた生きる意味についての問いと、指導者としてのシーモアとの出会いがシンクロしたからだ。誰が、なぜ、その人物を撮りたかったのか。本作はそれについてのドキュメンタリーでもある。ラストの演奏カットは監督の被写体への愛にあふれている。
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TVプロデューサー
山口剛
シーモア・バーンスタインというピアニストをネットで調べてもCDは一枚も表示されない。しかし本作を見ると彼がすぐれた演奏家、音楽教師であり、類い稀な人間的魅力の持ち主である事が判る。飄々としたユーモラスな語り口、芸術家特有の気むずかしさは全くないが、深遠な言葉が、彼のピアノのような優しい声色で次々と口から出る。ドキュメンタリーというと映画的完成度よりテーマが重視されるが、撮影、編集、録音も見事でイーサン・ホークの彼に対する崇拝の念が溢れている。
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