ANTIPORNO(アンチポルノ)の映画専門家レビュー一覧
ANTIPORNO(アンチポルノ)
1971~1988年に多くの成人映画を生み出した日活ロマンポルノの生誕45周年を記念したリブート(再起動)プロジェクトの1作。「映画 みんな!エスパーだよ!」の冨手麻妙が主演する園子温監督作。時代の寵児になり多忙を極める京子の過去が暴かれる。第 22 回エトランジェ映画祭コンペティション部門および第 49 回シッチェス・カタロニア国際映画祭コンペティション部門正式招待作品。
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映画評論家
北川れい子
極彩色のビジュアルや、神経を尖らせた挑発的な演出は、ペドロ・アルモドバル作品を連想させるが、スタジオ撮影に仕掛けをした二重、三重の破壊的ドラマは園子温監督の面目躍如、この作品が生まれたというだけでも日活ロマンポルノの再起動、大いに意義がある。そういえば園監督は再起動の記者会見で、“女性の権利と主張は何か”を考えて作ったと語っていたが、そういったテーマ(!?)よりも女優力と映像のパワーの方が先行しているのが私には嬉しい。特に筒井真理子が素晴しい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
勢いばかりで最後は放り投げている。キリスト教的なものや家族関係からくる抑圧とそこからの解放が女性の淪落とメンヘラ的大暴れに仮託される。相変わらずの園子温節だが、冨手麻妙が叫ぶ、ポルノ=反体制のイメージやそこに安住する男たちへの批判には、それらを良きものとするときに高をくくっていた部分をグッサリ刺された(とはいえ釜ヶ崎の路傍で、ウチ、なんや逆らいたいねん、と呟いた芹明香の輝きはいささかも色褪せないが)。あと筒井真理子さんが脱いだ衝撃&感動。
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映画評論家
松崎健夫
繰り返しになるが、このリブートプロジェクトは〈ロマンポルノ大喜利〉として「今回の5作品内で相対的に評価すべき」というのが個人的見解。そういう意味で本作には『悲愴に乱れる』といった趣もある。予算や濡れ場といった〈大喜利〉に対して、監督の姿勢ははっきりしている。性的暗喩を導く悪夢的な映像美には、逆転・堂々巡り・入れ子の構造といった園子温の過去作品との共通点があり、赤・青・黄の三色を基調とした室内の色彩が裸体と対比され、光が“影”をも生み出している。
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