海は燃えている イタリア最南端の小さな島の映画専門家レビュー一覧

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

    「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」のジャンフランコ・ロージ監督による第66回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞のドキュメンタリー。イタリア最南端に位置するランペドゥーサ島を舞台に、島民の日常や過酷な旅を経て島にたどり着いた難民・移民の姿を映し出す。劇場公開に先駆け、2016年10月9日、第11回 UNHCR 難民映画祭にて上映。
    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      イタリアで離島の映画といえば、ロッセリーニの「ストロンボリ」(49)だ。バーグマンが地中海の島男と一緒になるも、島での閉塞的生活に悲鳴を上げる。突拍子もない比喩を吐かせてもらうなら、本作は「ストロンボリ」の不可能性に引き裂かれた「前日譚」だ。島民たちの平穏な生活と、島人口の10倍近い数のアフリカ・中東難民の苦境の、あまりの乖離。駐在医師がこの距離をわずかに取り結び、少年の弱視の進行と共に、バーグマン的他者性が静かに浸透しつつあるかのように見える。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      やっぱり今そこにある問題を描くには、ルーティンではダメなんだろうか。島の人々の生活と難民の状況が並行して描かれ、互いに接触することがない。無造作な作りだが、意識して見つめれば、凄く深い意味が込められている。このぶっきらぼうな手法に眼を惹かれ。ただ、戦争ごっこが好きな少年が、片目でものを見るようになり、最後は小鳥を労わるようになる。そこに演出の意図を強く感じたのだが。秀作だと思う。作品の意義も分かる。だけど、この単調さにひどく退屈した自分もいて。

    • 映画ライター

      中西愛子

      地中海を渡った5万人を超える難民の玄関口となる、イタリア、ランペドゥーサ島。ドキュメンタリーだが、この島から難民問題をジャーナリスティックに語るのではなく、島に暮らす普通の人たちの日常風景を淡々ととらえ、そうした静かな生活のごく近く、地続きに、緊迫した現実があるのだと、ふたつを溶け込ませるように、むしろアーティスティックな映像詩へと織り上げていく。スタイリッシュすぎるのが少しイヤなのだが、まなざしの深さには圧倒される。島の少年が素朴でかわいい。

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