娘よの映画専門家レビュー一覧
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
母娘がパキスタンの封建的な家父長制からの逃走を試みる。米国に移住したコロンビア大卒の女性監督、という外部化された視点による伝統的人権意識への力強い批判。ただし映画の中盤以降は、人妻の不倫旅行に堕する危険性も生じる。そうなると批判する側の潔白性も弱まり、かといって近松的な破滅の道行きにも依拠できない作者は、シナリオに苦心したのではないか。逃走描写に安手のアクション映画演出が施される点は残念至極。娯楽性との融合が垢抜けない。ロケの絶景は圧巻。
-
脚本家
北里宇一郎
十歳の女の子が初老の族長の嫁になることに。さあ大変と母親が娘を連れて逃避行。そのハラハラが要となるが、パキスタン山岳地帯の風景が珍しく、母娘を助ける運転手のトラック、その祇園祭の山鉾みたいな形体も面白い。演出は堅実な筆遣い。そこが逆にサスペンス効果を上げて。部族抗争の行方が曖昧だったり、結末にもう一工夫ほしいという欲も。が、かの国の女性が置かれた立場を、シリアスな告発調ではなく、追っかけ映画のスリルで描いた、この新人監督のスピリットは大いに認めたい。
-
映画ライター
中西愛子
パキスタンの山奥で、2つの部族間の争いを収めるために、老部族長と幼い娘の婚姻が決まる。その事実を知った母は、娘を連れて逃避行に出る。女性を縛る古い因習を批判したアジア映画かと思いきや、アメリカで映画を学び、現在はNYで活動するパキスタン人女性監督が撮ったこの作品は、むしろ痛快なロードムービーといった趣。エンタテインメントとして楽しめるが、テーマ性は意外とあっさりしている。鮮やかな色のショールを羽織り、己を貫く母と娘の美しさが頼もしくて印象的。
1 -
3件表示/全3件