ターシャ・テューダー 静かな水の物語の映画専門家レビュー一覧
ターシャ・テューダー 静かな水の物語
スローライフの母と呼ばれる絵本作家、故ターシャ・テューダーの生誕100年を記念し、自然に寄り添った暮らしを営んできた彼女の生き方にカメラを向けたドキュメンタリー。ライブラリー映像に秘蔵映像や現在のテューダー家の様子を加え、彼女の魅力に迫る。監督は、テレビ番組『喜びは創りだすもの ~ターシャ・テューダー 四季の庭~』や『猫のしっぽ カエルの手』を演出、「犬に名前をつける日」で構成を手がけた松谷光絵。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
絵本作家の晩年を彩るニューイングランド地方での古風な田園生活。家庭菜園、伝統的な生活様式。「スローライフの母」の異名を持つ主人公の口から発せられる珠玉の人生訓。開拓時代の気風を残した彼女の不屈の生きざまには感服させられる。しかし、異端を容認しない頑迷さが漂い、邸宅を訪れる子や孫やその配偶者は例外なく彼女を敬い、あまつさえ19世紀のような衣裳に身を包んでいる。普段はナイキとか着ているくせに、セレブのお婆ちゃん宅への訪問用コスチュームがあるのか。
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脚本家
北里宇一郎
光があれば闇がある。闇があるから光は輝く。だけどここには陰がない。お日さまだらけのお庭にお花。犬に猫に、ニワトリあひる。手作りジャムもおいしそう。スローライフの農場暮らし。だけど旦那はどこ行った。百姓仕事イヤになり、さらばさらばと出ていった。地上の楽園夢のよう。ターシャそこまで踏ん張って、築いた成り立ち見たかった。彼女の生誕百年の、お祝い映画のめでたさよ。微笑みあふるる宴の輪。入れず私は影の中。そういやこちとら園芸よりは、演芸好みのバチ当たり。
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映画ライター
中西愛子
絵本作家ターシャ・テューダーは、緑と花に囲まれたライフスタイルを実践したスローライフの母としても知られる。が、このドキュメンタリーを観ると、彼女がとんでもない名家の出であり、その血筋とその中におけるある種の異質性が生んだ人間味溢れる天才だとわかる。だから、癒し系ゆるさというよりは、強く気高い本物の凄さを感じ、ピンと背筋が伸びる気持ちになるのだ。美しい風景。優雅さと慎ましさ。人生を生きる上での数々の名言。極上という何かに彼女の姿から触れられる。
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