エル ELLE(2016)の映画専門家レビュー一覧
エル ELLE(2016)
ポール・バーホーベンがイザベル・ユペールを主演に迎えたサスペンス。ゲーム会社の社長ミシェルは、独り暮らしの自宅で覆面の男の襲撃を受ける。以後も不審な出来事が続き、過去の体験から警察との関わりを避ける彼女は、自ら犯人探しに乗り出すが……。原作は、「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」のフィリップ・ディジャンの小説。
-
批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
変な話だなあと思いながら(悦んで)観終わったが、考えてみれば原作者フィリップ・ジャンの「ベティ・ブルー」も変な話だったし、何より監督ヴァーホーヴェンの「氷の微笑」は相当変な映画だった(と今にして思う)。「パーソナル・ショッパー」がクリステン・スチュワートをひたすら「見る」映画であったように、これはとにかくイザベル・ユペールを「見せる」映画である。ストーリーも心理的納得も無茶苦茶と言えば無茶苦茶だが、そんなことは問題ではない。かなり変だが面白い。
-
映画系文筆業
奈々村久生
若い時代はもちろん、歳を重ねつつあるユペールの、映画界におけるパイオニアとしての役割ははかりしれない。他のどの女優が、六十歳を越えて、母でも妻でも親戚のおばちゃんでもおばあちゃんでもない、あるいはその誰でもあり得る現役の「女性」を、セクシュアリティとともに演じられるだろうか。ユペールでなければ破綻していたようなキャラクターを、ヴァーホーヴェンの極端な世界の中でも見事に成立させ、かつ品と気高さすら感じさせるものにした力量に感服するばかり。
-
TVプロデューサー
山口剛
冒頭、ミシェルを襲った黒覆面の男は誰かといった単純なミステリーではない。社会的にも成功している女社長ミシェルを中心としたセックスがらみの人間ドラマといっていいだろう。ヒロインをはじめ彼女の母親、息子とその妻、会社の同僚、別れた夫、いずれもアブノーマルで好感の持てる人物は一人もいない。こんな人間関係の醸し出すサスペンスが何とも強烈で面白い。アメリカの女優が皆尻込みしたという異常なセックスシーンをユペールが体当たりの好演、役者根性を見せる。
1 -
3件表示/全3件