海の彼方の映画専門家レビュー一覧
海の彼方
日本統治時代に台湾から沖縄県石垣島に移住した一家に焦点を当てたドキュメンタリー。2015年春、念願だった台湾・埔里への帰郷を果たした88歳の玉木玉代たち家族に密着。時代に翻弄された一家の3世代にわたる軌跡と家族愛、八重山台湾人の歴史を追う。台湾が日本に統治されていた時代に沖縄に移り住んだ台湾移民をテーマにした黄インイク監督の長編ドキュメンタリーシリーズ『狂山之海(くるいやまのうみ)』の第1作。一般公開に先駆け、第12回大阪アジアン映画祭特別招待作品部門にて上映(上映日:2017年3月7日、8日)。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
戦前に石垣島でパイナップル農場を開墾した台湾移民という、社会の知られざる切り口を提示した点では、正調のドキュメンタリーである。だが映画は題材の良し悪しで決まらない。似たような機能しか果たさないカットが重複し、モノローグも字幕も説明的すぎる。編集でもっと刈り込んだ方がいい。一家が久しぶりに帰郷した先で、言語の通じない親戚同士が行うことといえば、煙草の交換とか米寿の金一封の押し問答でしかない。人間のこの曖昧な隔絶にこそ鋭く迫ってほしいのだ。
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脚本家
北里宇一郎
石垣島に移住した台湾人夫婦。その三世代にわたる家族の軌跡を追う。日本統治下の台湾、戦中・戦後そして現在に至る沖縄の状況の中で、日本人でもなく台湾人でもなく生きてきた彼らの重み。「日本人から差別」の言葉がイタい。一家の中心人物のお婆が魅力的で、一族勢揃いの米寿の祝い、娘・孫を引き連れ台湾に里帰りの光景が愉しい。孫息子を映画の案内役にしたのも功を奏して。が、監督が素材に惚れすぎの感。ちと冗長なのが残念。もう少し家族と状況との関わりが見たかったという欲も。
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映画ライター
中西愛子
日本統治時代の台湾から、沖縄石垣島へ多くの人々が移住した。その一家族が、時を超えてアイデンティティを探る旅を追ったドキュメンタリー。主人公となる玉代おばあちゃんは、88歳の米寿を迎え、百人を超す子孫に囲まれている。異国で苦労しながら生き抜いた逞しさと素朴な明るさが、少しぶっきら棒なところも好ましい玉代さん始め、この家族には共通していて、大家族の迫力を見る。台湾移民の歴史を案内してくれる作品でもあるが、もう少しタイトに編集してもよかったのでは?
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