悪と仮面のルールの映画専門家レビュー一覧
悪と仮面のルール
芥川賞作家・中村文則の同名小説を映画化。自分は絶対的な悪として創られたことを父に告げられた11歳の文宏は、父が初恋の女性・香織に危害を加えようとしているのを知ると、父を殺して失踪する。十数年後、文宏は顔を変え、香織を守る殺人者となっていた。出演は、「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」の玉木宏、「僕らのごはんは明日で待ってる」の新木優子、「トモダチゲーム 劇場版」の吉沢亮、「野火」の中村達也、「アウトレイジ 最終章」の光石研、「東京喰種 トーキョーグール」の村井國夫、「武曲 MUKOKU」の柄本明。監督は、数々のPVやCMを手掛ける新鋭・中村哲平。
-
評論家
上野昻志
文体で、その観念性を具体的に見せている中村文則の小説の映画化がいかに難しいかということを、正直に露呈した映画だ。 つまり、ここには映画的なアクションが、決定的に欠けているのだ。確かに、主人公を演じる玉木宏は、暗い過去を背負ったような憂鬱な顔を見せている。だが、香織(新木優子)に近づく男を殺したといっても、毒物を使ったという説明があるだけで行動はない。彼を脅迫する兄(中村達也)にしても、言葉以上のアクションはない。終始、この調子なのだ。
-
映画評論家
上島春彦
壮大なる野心作、と言えないこともない。だがキャラクター設定があまりにずさん、話も結構自分勝手。さぞ思弁的な原作だろうと推測はするが「悪」の観念が中二病レベルである。なので美女をストーカーする青年の妄想譚みたいになっちゃった。この美女もずいぶん鈍感なヒトだなあ、と私は呆れたわけだがラストの主題歌を聴くとそうじゃなかった、と判明。不思議な趣向である。歌こみで物語なのか。主題の一つであるテロの扱いも感心しない。俳優の顔が美しいのは大いなる救いであった。
-
映画評論家
吉田伊知郎
小説で読めばさぞかし面白いのだろうが、原作をなぞっているものの映画的なメリハリに欠けるので140分弱は冗長。舞台中継の如く平板なカット割りとアップで抑揚に欠ける会話シーンを延々と見せられるので、柄本明以外の主要キャストに長丁場の芝居を引っ張れる俳優が不在ということもあり、退屈に拍車をかける。「霊的ボリシェヴィキ」の息づまる対話を直後に観てしまっただけに分が悪い。悪だの邪だのと大上段に脅かしてくるが、蛇が出そうで邪も……いや蚊も出ぬ映画だった。
1 -
3件表示/全3件