リベリアの白い血の映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
たとえば村上隆が唱えた“スーパーフラット”は現在進行形のフジヤマ=ゲイシャであり、リオ五輪閉幕式で披露されたジャポニスムもその延長線上にある。本作の存在意義は、そんな“売り”にまったく無頓着な点にある。西アフリカ・リベリアのゴム採集労働者が環境に嫌気が差して、一旗揚げようとNYに移住する。そこには日本人監督の強みなんぞ当てにせず、個の苦渋、個の叫びへの普遍的なまなざしだけがある。日本映画の業界的脈絡を外れたこの作品は、存在するだけで意義がある。
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脚本家
北里宇一郎
ゴムを採取のオッサン労働者たちがストライキを打つ。女房連はそれを理解できずに「怠けるな」とケツを叩く。ボヤキながらブラブラする亭主たち。そのスケッチが面白く、辛さの中にユーモアをにじませた演出に身を乗り出した。後半はガラリ、ニューヨークが舞台になる構成の妙。未来のために働く男、そこに過去が現れてまとわりつく。その奥にリベリア内戦の残酷を匂わせて。怖い。惜しいのは突然の事故の設定。それで結末が舌ったらずになって。88分の力作。この監督、先が楽しみだ。
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映画ライター
中西愛子
リベリアからNYへ向かった男の物語を、NYを拠点にする日本人監督・福永壮志が長篇デビュー作として製作。経緯も含めてかなり独特だが、丁寧な作りで安定した見応えがある。前半はリベリア、後半はNYを舞台にしており、2部構成、いや、2つの作品が1本になった印象。そもそも撮影監督の村上涼(本作を撮影中に病で若くして死去)がドキュメンタリーとして撮っていたリベリア部分に着想を得てフィクションにしたとのこと。リベリア部分は興味深いので、そちらも観てみたい。
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