YARN 人生を彩る糸の映画専門家レビュー一覧
YARN 人生を彩る糸
糸を編むことを通じて表現する4組のアーティストの活動を追ったクラフト・アート・ドキュメンタリー。全身ニット集団と街を闊歩、糸を使ったパフォーマンスなど、個性的なアーティストたちが、その活動から“YARN”=糸に人生そのものを見出してゆく。メガホンを取ったのは、アニメーターとして活躍し、これが長編初監督となるアイスランド出身のウナ・ローレンツェン。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
まず理屈抜きに「糸」の美しさに目を奪われる。それから「羊」の愛らしさにも。YARN(糸)を共通項とする四組のアーティストを紹介するドキュメンタリー。彼女たちの作風は四者四様だが、編み物をアートにまで(結果として)高めた点で繋がっている。いや「高めた」という言い方は間違い。編み物はそれ自体が芸術なのだ。国際的に活動する日本人テキスタイル・アーティスト堀内紀子の姿も。監督ローレンツェンは軽快洒脱なタッチで、門外漢にもYARNの魅力を教えてくれる。
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映画系文筆業
奈々村久生
ニッティングという行為は、実際に手を動かしてみると非常に地味な作業ではあるが、一本の糸から形あるものを編み上げていく過程はヴィジュアルとして映えるし、生きていく上で人が直面するいろいろな側面を投影するのに適している。だからそれに携わる人々の思いや実績も伝わりやすい。編み物が女性の属性のように見えるのは気になるけれど。それに比べると文章を綴ることは、具体的な工程を可視化するのがずっと困難であり、その労力や実態は見えづらい。ちょっと羨ましい。
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TVプロデューサー
山口剛
YARNとは糸を紡ぐの意。映画は毛糸を編むことによって自己表現を志す女性アーティストたちのドキュメンタリーだ。その「作品」とは、毛糸の着ぐるみで町を練り歩いたり、町中の郵便ポストにセーターを着せるなど街頭や海岸でくりひろげるパフォーマンスで一昔前に流行ったハプニング、コンセプチュアル・アートなどと言われたものだ。作品として評価するなら、紹介されていないが、日本作家のタブローの方が、緻密で美術的にも工芸的にもすぐれていると思うがいかがだろう?
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