ぼくの名前はズッキーニの映画専門家レビュー一覧

ぼくの名前はズッキーニ

第89回アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネートほか各国の映画賞を席巻したストップモーションアニメ。不慮の事故で母を亡くした9歳の少年イカールは、彼女がつけた“ズッキーニ”というあだ名を大切にしている。彼は孤児院に連れて行かれるが……。アヌシー国際アニメーションフェスティバル2016最優秀作品賞・観客賞受賞、第42回セザール賞最優秀脚色賞・最優秀長編アニメーション賞受賞、第74回ゴールデングローブ賞長編アニメーション賞ノミネート。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    こういうタイプのアニメ作品を見慣れていないので、まったくの個人的な印象論になってしまうのだが、バンド・デシネにも同じようなことが言えると思うが、ヨーロッパ(とりわけ仏語圏)の場合、シリアスなドラマをシリアスにし過ぎないために、アニメというか非実写的な方法が活用されていると思えるところがある。この作品も同じストーリーを実写でやったら、ずいぶん重い映画になってしまうだろう。だが、それは中和ではない。デフォルメされた人物は生身では出せない痛みを放つ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    不慮の事故で亡くなったとされる主人公の母親だが、本篇を観る限り、本当にそうなのか? と思わざるを得ない。これはもっと重いものを背負ってしまった子供の物語なのだろう。でなければ母親の死をわざわざあのような描き方にはしないはずだ。それでもお洒落で垢抜けた色づかいやデフォルメの表現は優しく、クレイの肌や服の生地の質感がフェティシズムを誘う。そして特筆すべきは照明! ストップモーションという実写の底力を見せつけるような光の作り方、当て方が素晴らしい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    人形のコマ撮りで作られた作品だが、登場人物たちの微妙な感情や心理が見事に表現されているのには驚かされる。孤児院の悪ガキどもの弱者同士は助け合おうとする幼い連帯感が心を打つ。「操行ゼロ」「大人は判ってくれない」「わんぱく戦争」など子供たちを描いたフランス映画の伝統を感じさせるが、孤児院をよくある劣悪な矯正施設ではなく、福祉行政の行き届いた場所として描き、外部が必ずしも自由な世界ではないことを暗示した視点は現代社会に対する批判とも思える。

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