ビブリア古書堂の事件手帖の映画専門家レビュー一覧

ビブリア古書堂の事件手帖

三上延による同名ミステリーを、黒木華×野村周平主演で「幼な子われらに生まれ」の三島有紀子監督が映画化。夏目漱石の『それから』に記されたサインと、太宰治の『晩年』の希少本に隠された謎をビブリア古書堂の店主・篠川栞子と店員の五浦大輔が解き明かす。共演は「海街diary」の夏帆、「菊とギロチン」の東出昌大、「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」の成田凌。脚本は「3月のライオン」の渡部亮平と「少女」の松井香奈。
  • 評論家

    上野昻志

    上手になったね、三島監督。ミステリーとして凄いわけではない。だって、太宰の『晩年』の希少本を狙う男が誰かというのは、すぐ察しがつくのだから、謎解きにドキドキするというわけではない。主人公の祖母の秘めたる恋の話も、1964年当時の風俗を知っている者からすれば、衣裳を含め古風過ぎる(まるで大正時代みたい)とは思うものの、それらを重ねて話を運ぶ手際が、いとも鮮やかなのだ。野村周平のイノセントな青年と眼鏡をかけた黒木華の思慮深い女性の組み合わせもよい。

  • 映画評論家

    上島春彦

    古書好き必見、とは書けないので星をつけられない。原作が好評らしいが、どこがいいのか分からない。魅力を捕まえ損なっているのか、ミステリーとして話が薄く、古書のうんちくも弱い。配役のゴージャスなのが救い。説話的には現代篇と過去篇が交互に展開され、共通する一人の女の秘密が暴かれる構成。夏帆は美しく撮れているが時代の雰囲気がヘン。東京オリンピックの頃とは思えないのだ。昭和初期っぽい。作ってる人、誰もそう思わなかったのかな。続篇を是非見てみたいシリーズ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    かつての角川映画が赤川次郎で作っていたような作品は監督の技倆がなければ成立しないが、前作でホンに恵まれて演出力を飛躍させた三島有紀子だけあって、ライトミステリーの理想的な形を見せた。鎌倉ロケと古書堂セットも巧みに接合させ、黒木の化粧っ気なく線の細いヒロイン像も繊細な演技で成立させている。チープになりそうな過去パートを東出によって重しにしているのも良い。ただし、危機の度に本が犠牲になることへ古書マニアのヒロインが悩む気配も見せないのは気になる。

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