マルクス・エンゲルスの映画専門家レビュー一覧
マルクス・エンゲルス
若き頃のカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの活躍を描く伝記映画。その過激な言動によりドイツを追われた26歳のマルクスは、パリで労働階級について研究するエンゲルスと出会う。2人は政治的暴動や動乱をかいくぐり、新しい労働運動を生み出す。監督は、「ルムンバの叫び」のラウル・ペック。出演は、「汚れたダイヤモンド」のアウグスト・ディール。
-
ライター
石村加奈
社会の仕組みや歴史の枠を越えて、政治、宗教、経済などの様々な問題解決に挑む、若き日のマルクスの大胆不敵な様が痛快だ。未熟だが変化の激しい季節に焦点を絞った点が功を奏した。冷静な革命家の強烈な魅力はここにある。出色は資本家エンゲルスとの友情。激しい批判で自らの理論を鍛え上げる一方、精神的疲労に苛まれたマルクスが、エンゲルスに見せる笑顔。厳めしいトーンが基調の作中、深遠な思想家が「よいもの」を所有することを示す海辺のシーンは凪のようで、印象的だった。
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
中米ハイチのベテラン監督R・ペックがマルクスとエンゲルスの青年期を撮っているわけだが、喧嘩あり恋ありセックスあり追っかけあり。なかなかの痛快青春巨篇とあいなった。『資本論』『共産党宣言』の著者コンビをよくぞこんなに小気味よく取り扱ったものだ。ブルジョワ階級の搾取的支配に対し、労働者階級がどれだけ堅固な闘争ポーズを取れるのか。映画はその陣営内選手権の様相を呈する。プルードン、ヴァイトリングらの先達を倒していく2人の元祖パンクな勇姿が絶好調である。
-
脚本家
北里宇一郎
思想家にして革命家の2人が題材。小難しい理屈を振り回す映画だったらかなわんなと半分斜めに構えて観ていたが、両者が売り出すまでの青春譚だったので結構面白かった。人を人とも思わぬ資本家とか権力者だけが敵ではなく、理論をもて遊んでいるだけの啓蒙者もやっつけるところが興味を惹く。19世紀中盤の欧州の雰囲気とか時代の流れがよく分かり、演出も快調。ラストの演説など、経済格差とか非正規雇用がはびこる現代にも通じ、巻末に流れるあの人の歌声と共に、ちと胸が熱くなった。
1 -
3件表示/全3件