かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発の映画専門家レビュー一覧
かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発
地方のローカル線を舞台にした「RAILWAYS」シリーズ3作目。晶は連れ子のいる修平と結婚し、東京で暮らしていたが、夫が突然亡くなり、息子を連れて夫の故郷・鹿児島を訪ねる。義父・節夫と暮らすことになった晶は、節夫と同じ鉄道の運転士を目指す。出演は、「コーヒーが冷めないうちに」の有村架純、「哭声/コクソン」の國村隼。監督・脚本は、「バースデーカード」の吉田康弘。
-
評論家
上野昻志
これを見て、肥薩おれんじ鉄道に乗りたくなった。同監督の『旅立ちの島唄~十五の春』も良かったが、それを超えている。義父のもとに、亡夫の連れ子と共に訪れた晶(有村架純)が、どこか気負い込んだ様子なのが気になったが、それが、彼女が留守電で伝えた夫の死を義父が聞いていなかったためと明かす演出をはじめ、子ども(帰山竜成)の「親」たろうとする晶の想いが、子どもの想いとずれるとこころなども、感情の流れが自然に描かれている。晶の迷いを寡黙に受け止める國村隼の義父もいい。
-
映画評論家
上島春彦
このシリーズ、思いがけないローカル線が舞台になるのが何よりうれしい。今回は肥薩おれんじ鉄道、絶景観光や食堂列車など攻めの姿勢が見られる路線である。我が故郷、秘境駅の宝庫飯田線をつい思い出してしまう。見方によっては愚劣きわまりない半成人式というイヴェントを、地元に配慮しつつもきっちり愚劣なものとして描いてくれたので星を足した。やるな、監督。家族になるのも楽じゃないというありがちなコンセプトを「主人公三人が赤の他人」の極限状況にしたのも成功の要因。
-
映画評論家
吉田伊知郎
女性運転士の設定とロケ地が先行したであろうことは作劇に無理が生じていることからも窺える(殊に半成人式という無神経な儀式への異議申し立ては良いが、有村の突飛な行動に疑問が残る)。しかし、「旅立ちの島唄」で才気を感じさせた吉田康弘だけあって叙情性豊かな演出で鉄道と有村を輝かせる。義理の息子を引き取った未亡人が運転士になって働かざるを得なくなる不自由をまとう女性の物語だが、有村の柔らかな雰囲気が悲壮感をかき消し、運転する姿は寓話的な魅力も醸し出す。
1 -
3件表示/全3件