ダンガル きっと、つよくなるの映画専門家レビュー一覧

ダンガル きっと、つよくなる

インド映画世界興収1位を記録した実話に基づくドラマ。レスリング国内チャンピオンになるが生活のため引退した男。息子を金メダリストにすることを夢見ていたが、4人連続で娘が産まれる。十数年後、彼は長女と次女の格闘センスを見出し、二人を鍛え始める。出演は、「きっと、うまくいく」のアーミル・カーン、「始まりは音から~インド詩七篇~」のサークシー・タンワル。
  • ライター

    石村加奈

    父親と娘の夢が完全一致する幸運に護られて、親子で女子レスリング界の頂点を目指す鉄板のスポ根エンタメ映画か? という繊弱な見立てを豪快に裏切り、娘ひいてはインド女性の未来を案じて、女を見下す全ての人間に闘いを挑む、骨太なテーマに大興奮。父が金メダルにこだわる理由には滂沱の涙。父の猛烈指導に純粋培養されるのではなく、成長過程で抱く葛藤を、姉妹が手を取り合い一個ずつ昇華する中、畏るべき師匠としての父の愛を受け容れていく師弟のドラマもナチュラルでいい。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    日本女子レスリング界で協会幹部のパワハラ問題が騒動となっている。そんななか公開されるこのインド映画については、泣かせるエンタメとして享受する観客と、娘に対する父親の夢の押しつけ、つまり一種のDVではないかと困惑する観客に大きく分かれるかもしれない。ここにもまた現代映画が囚われた2つの妄執があからさまに貼りついている。つまり〈夢追い〉と〈家族愛〉である。この2つは普遍の顔をして、いかなる狂気をも併呑してやまない。本作は併呑の好例だ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    結婚して母親となってガマンしながら一生を過ごすより、レスリングをやって女として自立しろ。なんて諭す親父。娘二人は彼に従い、時に反発しながら闘い続け、結果、父親の喜ぶ顔を観て涙、涙。なんだこれ、父権復活映画か。それがインド映画のアッケラカーン・タッチで描かれる。いやもうこちらはただただ畏れ入るばかり。ただし時代劇では活きていた大芝居やパターンなキャラが、現代ものでは大仰すぎて。それでも見せ場のレスリング場面は、さすが客を楽しませるツボを押さえて感心。

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