シューマンズ バー ブックの映画専門家レビュー一覧

シューマンズ バー ブック

    世界中のバーでバイブルとなったレシピ本『シューマンズ バー ブック』の著者チャールズ・シューマンの旅を追ったドキュメンタリー。ミュンヘンで不動の人気を誇るトップバーのオーナーでもある彼が、もう一度バーの原点を求め、パリや東京などの名店を訪れる。監督は「聖なる呼吸 ヨガのルーツに出会う旅」のプロデューサーを務めたマリーケ・シュレーダー。
    • ライター

      石村加奈

      フローズン・ダイキリの故郷で寛いでいたかと思いきや、渋谷スクランブル交差点を闊歩するシューマン。劇中の言葉を借りれば“明日をも魅了する”背中がセクシーだ。気の向くままに世界を放浪し、各地の名店をふらりと訪れる、さすらいのバーマンの気どらぬ魅力を、編集のセンスが巧みに引き出す。ジャパニーズ・ルンバ(!)をはじめユニークな音楽も、映画の口当たりをなめらかにする。一方で、日本の席料(お通し代を含め由々しき問題)にもきっちりと言及する鋭い眼光には恐れ入った。

    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      最もスリリングなのは終盤の東京ロケだろう。世界で忘却されたオーセンティックなカクテル・レシピを墨守する日本のバーマンたちは、その過激な正統性追求ゆえにかえって世界の異端に属する。そしてその神学的違和ゆえに、液体の調合が至高芸術たり得てもいるのだ。突如としてサッカーの元バルセロナ監督グアルディオラがブニュエル自伝の一節「バーは孤独の修行だ。かすかにであろうと音楽はお断り」と朗読し始めた時点で、このドキュメンタリーの作者は信頼できると確信した。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      カリスマ・バーマンが数カ国の酒場を漫遊。それぞれのバーテンダーのバーに対する想いやカクテルの作り方に違いがあって、興味を惹かれた。面白かったのは各人のシェイカーの振り方で、主役のシューマンは豪放磊落。日本人はスタイリッシュで律儀。キューバ人はジューサーで大量生産というのが笑えた。正直、こういう素材が作品として成立するのかと思ったけど、シューマン氏のハードボイルド的風貌につられて映画もちょっとカッコよく、結構楽しめた。さて、一杯飲みに行くか。

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