ここは退屈迎えに来ての映画専門家レビュー一覧
ここは退屈迎えに来て
地方都市に住む女性の心模様を綴った山内マリコの同名連作短編集を、廣木隆一監督が映画化。実家に戻り冴えない日々を送る中、高校時代に憧れていた椎名くんを探す「私」。元恋人・椎名を忘れられない「あたし」。退屈を埋める何かを椎名くんに求めるが……。「ママレード・ボーイ」「彼女の人生は間違いじゃない」など恋愛映画を数多く手がける廣木隆一監督が、居場所を求める女性たちの心情を掬い取る青春群像劇。出演は「美しい星」の橋本愛、「世界は今日から君のもの」の門脇麦、「ニワトリ★スター」の成田凌ほか。ロックバンド、フジファブリックが主題歌および劇伴を手がける。
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評論家
上野昻志
東京から地元に戻ってフリーライターをしている「私」が、高校時代の友だちと、当時、憧れの的だった男に会いに行くという話を、車が替わるごとに、乗っている人物も時制も替え、それぞれの姿を描く構成は巧みだが、基点にある高校時代が生彩を欠く。過去を懐かしむ話ではないと抑制したのかもしれないが、憧れの的の椎名君(成田凌)も特に輝いていないし、奇跡のように楽しかったというゲーセンでの遊びも、どこがという感じ。最後の椎名の言葉に呆然とする橋本愛の表情は良かったが。
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映画評論家
上島春彦
タイトルは意味ありげだが、橋本愛と門脇麦の飢餓感を、かつての同級生成田凌が癒してくれるという物語では全くない。むしろそれぞれが、成田に象徴される「世界」と「出会い損ねる」みたいな感覚だな。癒されるのではなく、飢えはかえって深まる。その感じをさらに強めるのが、ゲーセンにぽつんと座っている渡辺大知の孤独な表情である。フジファブリックの名曲〈茜色の夕日〉が一人一人断片的に歌われ、やがてそれぞれのアカペラが積み重なっていくあたりの盛り上がりが凄いです。
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映画評論家
吉田伊知郎
同じ原作者でも映画のノベライズみたいな「アズミハルコは行方不明」よりも本作は脚色しがいがあると思っていた。山戸結希あたりが適任と思ったが、廣木隆一ならば職人技が期待できる。ところが何もない話をロングショットの長回しで延々撮っているだけなので、閉塞した空気感も東京への憧憬も台詞で空虚に響くのみでは〈この映画は退屈、どうにかして〉という気分に。椎名君を巡って時制を往復させる作劇も退屈さに拍車をかけ、彼の魅力が説明されるほどに感じられないのも辛い。
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