止められるか、俺たちをの映画専門家レビュー一覧
止められるか、俺たちを
「孤狼の血」の白石和彌監督が、師匠である故・若松孝二の若き日を映し出す青春群像劇。1969年、21歳で若松プロダクションの門を叩き、助監督として奔走した吉積めぐみの目を通して、映画や政治、そして恋、なにもかもが危うくきらめいていた一瞬の時が綴られる。吉積めぐみを「サニー/32」の門脇麦が、若松孝二を「光(大森立嗣監督)」の井浦新が演じる。脚本は「あいときぼうのまち」の井上淳一。撮影を「だれかの木琴」の辻智彦が務める。
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映画評論家
北川れい子
若松孝二のピンク映画を初めて観たのは50年近く前の新宿蠍座での特集上映で、むろん独りで意気がって。そうか、当時の若松プロは、こんな人たちが出入りし、こんなふうに映画を作っていたのか。この若松プロに助監督として飛び込んだ吉積めぐみを、“不思議の国”に迷い込んだ“アリス”よろしく描いているのだが、時代、状況、事件、騒動などを背景にしためぐみの周辺の治外法権的な自由さは、ザックリなりに伝わってきて、どのエピソードもくすぐったい。郷愁にしてないのがいい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
テンション上がりっぱなし。若松プロ版「24アワー・パーティ・ピープル」もしくは「ストレイト・アウタ・ピンク映画」。本作作り手たちと同様?、私にとってもガイラさん足立正生さん荒井晴彦さん福間健二さん(そして沖島勲さん)らは会いにいけるアイドル、ヒーローで、それが神話化でも矮小化でもなくこのように映画化されたことには刺された。また吉積めぐみさんを中心に、その眼を通してということがデカい。批判もあるだろうが、映画の現場に携わる女性に特に観られてほしい。
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映画評論家
松崎健夫
ヒロインの“背中”が、観客を70年代の映画製作現場へと誘う。そこには既に、目には見えない時代の〈空気〉なるものが存在する。70年代の若者たちの熱量を提示しながら「自由な環境は自分たちで作り出すもの」と、我々の棲む現代社会を批評。例えば、同調圧力、あるいは、言葉尻を捕らえるのをよしとすることで、目には見えない〈空気〉なるものの窮屈さを禁じえない昨今の状況に対して、本作は「出鱈目な熱量の中でしか文化は生まれないのではないか」と思わせるに至るのだ。
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