ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオスの映画専門家レビュー一覧

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス

    1999年に大ヒットしたヴィム・ヴェンダースの音楽ドキュメンタリー「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の続編。平均年齢 73才となった5人のメンバーが決行した“さよなら世界ツアー”に密着。メンバーの死も含めたその後の彼らの歩みに迫る。本作ではヴェンダースが製作総指揮に回り、「津波そして桜」でアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞候補になったルーシー・ウォーカーが監督を務めた。
    • ライター

      石村加奈

      97年の再結成時より、18年後の方がメンバーの背筋が伸び、若返っているという奇跡! イブライムステージ用に新調したスーツ、オマーラを飾るドレスにルージュ。彼らには、情熱的な赤がよく似合う。50年来の友情が珍しくもないキューバ音楽の歴史即ち世界とは、作中の言葉を借りれば「物質の世界」ではなく「真実の世界」なのだ。16年、フィデル・カストロの死からはじまる本篇のクライマックスは同年、ホワイトハウスでのライブ。政治について多くを語らずとも思いは伝わってくる。

    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      ヴェンダースのドキュメンタリーから約20年の年月が経過した。続編としてBVSCメンバー数人の死を看取るが、後日譚だけでない点が本作の特徴だ。BVSC結成前の前日譚――すでに引退して久しく、ギターさえ所有していない元ギタリスト、才能は認められつつも大成しないまま靴磨きで生計を立てる元ボーカリスト――がせつなく語られる。ブームの発火点となった前作を踏まえつつ、より思弁的な製作姿勢は好感が持てる。鑑賞後はキューバ音楽を爆音で聴きたくなること必至。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      前作はキューバにこんなイカすバンドがあるんだ! の驚きに満ちあふれていた。今回はその解説篇みたいな趣き。キューバの歴史、メンバー一人一人の歩み(若い時の映像が貴重)などが綴られ、さながらBVSC大全集の嬉しさ。そこから97年売り出しの時をピークにして、一人また一人とメンバーが亡くなっていく悲しみ。それでも活動は続くという最後の盛り上げ。その構成がピタリはまって。何より作り手たちの彼らに対する深い愛と敬意。それがこの映画をあたたかく息づかせて。

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