乱世備忘 僕らの雨傘運動の映画専門家レビュー一覧

乱世備忘 僕らの雨傘運動

2014年、香港で起こった雨傘運動の模様を記録したドキュメンタリー。民主的な選挙を求めて、数万人の若者が香港の金融街を占拠。鎮圧しようとする警官隊に雨傘で抵抗した。当時27歳のチャン・ジーウンもその輪に加わり、若者たちの姿をカメラで追った。チャン・ジーウンは、本作が長編監督デビューとなる香港の新鋭。
  • ライター

    石村加奈

    デモ中でも、恋のチャンスは見逃さないエネルギーをほほえましく感じつつ、それ以上に、学校や仕事は休まずきっちりと責任を果たす、若き香港人の勤勉さを尊敬する。自分のしていることは間違っていないと逮捕を恐れぬ彼らだが、デモによって市民が被る迷惑については素直に申し訳なく思う。このすこやかさは、彼らを取り巻く大人がきちんとしているからだろう。運動が収束しても彼らの?んだ信念は消えないはずだ。「この映画が証」と語ったラッキーの、最後の笑顔が焼きついている。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    香港選挙の民主派排除に抗議する「雨傘運動」が爆発した2014年秋の記録映画だが、惜しむらくは運動の中心部分や決定的出来事をカメラは捉えきってはいないこと。運動の片隅でがんばる若者グループの青春日記という体だ。運動の高揚から終焉までが当事者としての思い入れをもって記録されたが、タイトル「乱世備忘」のうち「備忘」という2文字にこそ本作の趣旨が込められたのだと思う。運動は収束したが、その種子はどこかに散布されたはずという切実な願掛けである。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    若者たちが立ち上がった雨傘運動。観てるとヒリヒリする。この日本でもその昔あった、そして今でもある光景が繰り広げられて。27歳の青年がキャメラを廻す。素人っぽい。状況に接近しすぎる。出てくる人物とか、何が起こっているか不明瞭なとこもある。けど、何とかしたい想い、怒り、悔しさ、無念、その時々の感情がライブ感覚で刻印されていて、胸を刺す。すべてが終わって、ある若者が呟く。「俺は(抑圧する側の)大人にだけはならない」。かつての自分もそうだったと、目が潤み。

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