バンクシーを盗んだ男の映画専門家レビュー一覧
バンクシーを盗んだ男
正体不明のグラフィティアーティスト、バンクシーとその絵がもたらす影響力に迫るドキュメンタリー。パレスチナのベツレヘムの壁にバンクシーが描いた絵が、地元住民の怒りを買う。1人の男がその壁を切り取り、ネットオークションで売却しようとするが……。ナレーションをロックミュージシャンのイギー・ポップが担当している。
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ライター
石村加奈
「バンクシーはクソ野郎だ」と断言するタクシードライバーのワリドは、全力を出したい時は、悪いことを思い浮かべて力を出すという、少年漫画の登場人物のように素直なボディビルダーの顔も持つ。ストリートアートは誰のものか? というテーマに、様々な立場から正論が吐かれる中、パレスチナの壁に描かれた「ロバと兵士」と、海を渡り、ヨーロッパの画廊に飾られたそれとの、あからさまな落差がポイントか。イギー・ポップの低音ボイスが、いろいろな声をひとつにまとめあげている。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
覆面画家バンクシーをめぐり、ペイントされた壁の所有者やオークション関係者、美術評論家がいろいろと持論を聞かせてくれるが、ヨルダン川西岸地区の壁という政治的要素が本質のほとんどすべてではないか。あとは“ストリートアートは芸術か?”というジャンル論の蒸し返しだ。壁から削り取られ、高額で売買された“作品”をカメラがとらえても、そこにあるのはホルマリン漬けのグロテスクだ。ならば本作はそのグロテスクへの自己省察たりえているか。そこを問いたい。
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脚本家
北里宇一郎
ベツレヘムの分離壁に描かれたバンクシーの壁画をめぐる騒動記。自分たちをロバと見なされた地元パレスチナ人の怒りから飛び火して、ディーラー、収集家、キュレーター、弁護士など美術に携わる人々が百家争鳴。その発言の数々は、その立場からは当然という内容でちと常識的。論争になっていかないのが物足りない。各人のコメントもしだいに堂々巡りとなって。バンクシー自身の反論がないんで、どこか芯のないドキュメントの感が。地元タクシーの運ちゃんとの対決、見たかったなあ。
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