体操しようよの映画専門家レビュー一覧
体操しようよ
草刈正雄が、定年退職を迎えたシングルファーザーを演じるヒューマンコメディ。妻に先立たれて18年、娘と共に家庭を営んできた60歳の佐野道太郎。ひょんなことから地元のラジオ体操に通うことになり、様々な世代の人々と出会いながら新たな世界を知っていく。共演は「羊の木」の木村文乃、「忍びの国」のきたろう、「ラストコップ THE MOVIE」の和久井映見、「勝手にふるえてろ」の渡辺大知。脚本は「森山中教習所」の和田清人と、「滝を見にいく」などのプロデューサー、春藤忠温。撮影を「ディストラクション・ベイビーズ」の佐々木靖之、音楽を「サバイバルファミリー」の野村卓史が担当。監督は「ハローグッバイ」「望郷」の菊地健雄。
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評論家
上野昻志
このタイトルでどうなの? と思ったが、いい意味で予想を裏切ってくれた。退職祝いの宴で、草刈正雄が挨拶しても、誰も聞いていない様子など、さもありなんという感じで肯けるし、無遅刻・無欠勤の律儀な男だから、ひとたびラジオ体操を始めると、マニュアル通りの体操を参加者に求めて嫌がられるなんて、この男のキャラの立て方が周到。そんな彼が、絵を描くのが好きということと、その絵の生かし方が、『ごっこ』の千原ジュニアの絵と重ねて、映画における絵の効果を想起する。
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映画評論家
上島春彦
面白い。にも拘わらず星が伸びないのは、若い人の目線で物語が作られ過ぎているせいだ。私のような老人にはチクチク痛いシチュエーション多し。そんなに年寄りいじめて楽しいか、と若者連中に問いたい。そもそも突然「主夫をやれ」と言われても無理に決まってるでしょ。娘さんの態度に怒りがこみ上げる私だが、まあ終わり良ければ全て良し、とするしかない。地域のラジオ体操の世界にも様々な権謀術策が入り乱れて飽きさせないが、主人公の天然さに救われる。草刈さんは正に天使だね。
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映画評論家
吉田伊知郎
「終わった人」と同じ定年映画と思いきや定番描写は冒頭のみ。草刈を直ぐにラジオ体操と遭遇させて、そこを起点に他者と緩やかに出会わせる。特異なテーマをこれ見よがしに扱うことなく、体操に妙な使命感を持たせずに、妻に先立たれた草刈がそれまで見向きもしなかった娘や暮らす町と交わるきっかけとして用いられるのが良い。融通が利かない草刈によって巻き起こる波風もささやかな小事件であり、さりげなく集まってくる人々の関係性を穏やかなタッチで描いた監督の手腕に魅了。
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