ピアソラ 永遠のリベルタンゴの映画専門家レビュー一覧
ピアソラ 永遠のリベルタンゴ
アルゼンチン・タンゴの名作曲家アストル・ピアソラのドキュメンタリー。革新的なタンゴを世に送り出し、タンゴ純粋主義者やメディアの非難を浴びたピアソラ。そんな彼と、彼を支えた家族たちの姿を、アーカイブ映像やプライベート・フィルムを交え映し出す。監督は、ベルリン国際映画祭ルイジ・デ・ラウレンティス賞受賞のドキュメンタリー作家ダニエル・ローゼンフェルド。
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ライター
石村加奈
没後25年記念に制作されたので、当然ピアソラ本人の回想コメントはないが、きっと本人が見たらいい顔はしないだろうモノも含め、膨大な資料がわかりやすくまとめられている。ピアソラの代わりに、一緒にバンド活動もしていた息子(本作の制作を希望した張本人)が登場するが、海のように偉大で、鮫のように鋭いアーティストたる父に振り回された人生への苦い思いを、訥々と語る姿は哀愁を誘うが、視点がぼやける。人々が行き交う街でカメラが捕らえた「ONE WAY」の標識が心に残る。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
アルゼンチン・タンゴの巨匠A・ピアソラについてのきちんとしたドキュメンタリーがこれまでなかったことは不思議だが、ピアソラの全盛期を知るファンが存命のうちにこうして誕生したことをまずは祝うべし。非公開の写真、スーパー8の私的映像、アーカイブがモンタージュされ、天才の生涯をかりそめながらも再生してくれた。巨匠が死去した90年代前半にピアソラ・ブームが結構盛り上がったことを思い出す。そして今、彼の楽曲を画期的に解釈する演奏者たちが現れんことを願う。
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脚本家
北里宇一郎
最後はオーケストラと競演するピアソラだった。タンゴの名手でありながら、クラッシックを夢見ていた。ダンス音楽としてのタンゴに反抗した。楽団はいつも変遷した。これでもない、あれでもないと試行錯誤の連続だった。タンゴでもありクラッシックでもある、新しい音楽を模索していた。彼の音楽をもっと聴きたかった。裏も表もさらけだした彼の人間性。そこを描くのもいい。だけど彼は音楽家だ。もっと演奏場面をと思う。ミュージカルのドラマ部分の如く私生活の描写は控え目にして。
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