赤毛のアン 卒業の映画専門家レビュー一覧

赤毛のアン 卒業

L.M.モンゴメリの名作文学を孫娘のケイト・マクドナルド・バトラー製作総指揮で映画化した3部作の完結編。アンは教師を目指し、ギルバートらとクイーン学院を受験し合格。初めての下宿生活でホームシックになりながらも、大学奨学金を獲得して卒業するが……。本シリーズを支えるジョン・ケント・ハリソン監督や、音楽のローレンス・シュレイジ、アンを演じるエラ・バレンタインや、サラ・ボッツフォード、マーティン・シーン、ジュリア・ラロンド、ドゥルー・ヘイタオグルーらスタッフ、俳優陣が再集結。脚本は第1作「赤毛のアン」を担当したスーザン・コイン。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    トルストイの『戦争と平和』やプルーストの『失われた時を求めて』など、長い小説が好きだ。登場人物の人生が移りゆくさまを味わえるからだ。本作にもその興趣があり、13歳から16歳のアンの青春期がやや駆け足ぎみに描かれる。初恋を経験し、良きライバルに恵まれ、育ての親と別れての下宿生活。奨学金があるのに大学にいかず、地元で働き口を見つけ、愛する島にとどまるという決断。映像を通じてアンと過ごしてきた時を振り返りながら、彼女がだした意外な結論に満足して頷いた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    シリーズの前作「初恋」で13歳だったアンは、今作では16歳。自分の進路、養父母の健康問題、環境の変化など、大人の試練に直面するのだから、3歳という年齢の変化は重要だ。演じるエラ・バレンタインは額に知性をたたえ、目力が強く、形の美しい唇から利発さがこぼれ、13歳のアンにはこのうえなく適役だったが、現実の重さを背負い成長する役どころとなると、その持ち味が?溂すぎる。映画ファンの身勝手は承知だが、全体的にドラマが平板に感じるのは案外ここに要因があるのかも。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    このシリーズ一連に言えることだが、マイノリティの女性がいかに自我と向き合って社会で生きていくか、その葛藤が原作の醍醐味なのに、強力なストーリーラインに甘えてキラキラの青春ものに変換されているところにどうしようもない違和感を覚える。モンゴメリのストーリーテリングの上手さが仇に。エラ・バレンタインの天真爛漫なヒロイン感がやはり朝ドラを彷彿とさせるのだが、実際にアンをモチーフにした朝ドラ『花子とアン』と比べると、テーマの掘り下げ方の違いがよくわかる。

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