黙ってピアノを弾いてくれの映画専門家レビュー一覧
黙ってピアノを弾いてくれ
一流アーティストたちが心酔する天才ピアニスト、チリー・ゴンザレスの破天荒な生き様を辿り、その魅力に迫るドキュメンタリー。ダフト・パンク、ジャーヴィス・コッカーらとの共演や、ウィーン放送交響楽団とのステージでの驚愕のパフォーマンス映像も収録。第68回ベルリン国際映画祭正式出品作品。
-
ライター
石村加奈
初めてピアノ曲『ジェントル・スレット』を聴いた時、シンプルかつピュアなメロディに驚かされたが、本作中でゴンザレスが語る「僕の中のサティ」という言葉で腑に落ちた。キリストより父親が絶対的存在の家で育った音楽少年は、カナダの大豪邸を飛び出して音楽の道を突き進む中、自分の居場所を見つけ、子供の頃の夢を叶える。自分の人生に代役など立てられぬという美しい人生哲学も彼らしくユニークに表現。ウィーン放送交響楽団とのライブでのクラウド・サーフィンにわくわくした。
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
ミュージシャンのドキュメンタリー世に多しといえど、錯乱した本作にひそむ美を見落としてはなるまい。フェイクとリアル、混濁と飛躍、喧噪と静寂、引き延ばされた興奮状態と、秘かにこぼれる悲しみが、リレー式に交代していく。ウィーン放送響の指揮者が「彼はドイツやオーストリアの音楽学校に合格しまい」と述べるが、その前後でウィーンの聴衆にむけた攻撃的なピアノの一打は誰にも出せない超絶音だ。9月にリリースされたばかりの新譜『Solo Piano Ⅲ』も必聴の1枚。
-
脚本家
北里宇一郎
ご本人は自分はアーティストではないと言う。エンターテイナーだと。でも、ただの目立ちたがり屋のパフォーマーにしか見えない。チリー・ゴンザレスの演奏をじっくり聴きたいと思った。断片的なライヴ映像の連なりじゃなくて。そちらはCDで間に合うとでも考えたのだろうか。音楽家の記録映画なのにその魅力が伝わってこない気がする。作り手が彼の言動に合わせすぎだと感じた。一緒になって面白がって、批評の眼を忘れたような。それとも最初からこれ、プロモーション映画だった?
1 -
3件表示/全3件