愛と法の映画専門家レビュー一覧

愛と法

弁護士の男性カップルを追ったドキュメンタリー。大阪の下町で法律事務所を営むカズとフミは、居場所を失った少年・カズマくんと暮らし始める。第30回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞(上映タイトル「Of Love & Law」)、第42回香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞。監督は、ロンドンを拠点に世界各国で映像制作に携わっている戸田ひかる。2018年9月22日より大阪のシネ・リーブル梅田にて先行上映。
  • 評論家

    上野昻志

    なんといっても、カズとフミという同性カップルの弁護士二人組が面白い。彼らの柔らかさというか、自然体で外に開く姿勢が、カズマという少年の寛ぎにも現れている。彼らが関わる裁判が、いずれも表現の自由やマイノリティーの権利に関わる事案であるのも、この二人ならではと思う。そこでは現在の裁判官の質も問題にされるが、無戸籍者についての裁判は、些かわかりにくい。どうせなら、『日本の無戸籍者』の著者である井戸まさえさんにもっと語ってほしかった。選挙運動もいいが。

  • 映画評論家

    上島春彦

    しょっぱな日本人の悪口が字幕で語られ、保守な私はかちんときたのだが、偏狭な制度の犠牲者に手を差しのべる弁護士カップルの話だから文句は言えない。このカップルが同性愛者、というのがミソ。裁判の事例同様、彼らのパーソナリティと生活も面白い。二人の同棲生活に一人の孤児が転がり込んできて、という展開はドキュメンタリーというより劇映画になりそう。現在の婚姻制度の偏狭性を冷静に批判する弁護士に食ってかかるバカが現れ、私も字幕の正当性を認めざるをえなかった。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    息の合った弁護士の〈夫夫善哉〉だ。大阪人らしい能弁な2人の会話が心地いい。戸籍、思想信条、わいせつなど彼らが手がけるのは根源的な自由を揺るがす案件ばかりだ。同性婚を行った自分たちの境遇から、扱う事件にも感情的になりそうだが、柔和な姿勢を崩さずに当たり前の権利を手にしようと軽やかに動き続ける姿が胸を打つ。少年犯罪の被害者の母親から電話口で国籍を詰問された時の一瞬見せる憤りとやるせない表情、だが直後にそれを口にしてしまう相手を慮る姿も忘れ難い。

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