セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!の映画専門家レビュー一覧
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!
政変の煽りを受け、宇宙ステーションからの帰還が延期されたソ連の宇宙飛行士の実話を脚色したコメディ。キューバのアマチュア無線愛好家セルジオは、偶然、宇宙ステーション・ミールに滞在中のセルゲイと交信し、彼を帰還させる一大プロジェクトを思いつく。出演は、「ビヘイビア」のトマス・カオ、キューバ人俳優のヘクター・ノア、「ストーンウォール」のロン・パールマン。監督は、「ビヘイビア」のエルネスト・ダラナス・セラーノ。第7回パナマ国際映画祭観客賞受賞作品。
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批評家、映像作家
金子遊
1992年のソ連邦崩壊から約四半世紀が経った。それゆえ、本作に映りこむ小道具の数々も懐かしく感じられる。宇宙ステーションから帰れないソ連の宇宙飛行士と、それを勇気づけるキューバの無線愛好家を、宇宙と地上のカットバックで描く本作。ウィンドウズの入ったパソコンも携帯電話も、一般的ではない時代。無線機や黒電話、クラシカルなコンピュータや8ミリ映写機のような小道具が、現代文明に取り残されたキューバの光景と相まって、不思議なユートピア性を醸しだしている。
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映画評論家
きさらぎ尚
このコメディ、奇想天外だがあり得ないことではない。実際、ソ連崩壊から四半世紀以上が経つ現代、国際宇宙ステーションと地球との有人輸送は、ロシアが一手に担っている。それにしてもインターネットのない時代にキューバとニューヨーク、宇宙の三者間で電波の不安定な無線通信を駆使して飛行士を救うとは、なんとも人間臭く愉快。特にアメリカの象徴的な飲料コカ・コーラを、冷戦時代に敵対していたソ連人宇宙飛行士救出に使う人類愛に奇想天外を飛び越える究極の人本主義を見る。
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映画系文筆業
奈々村久生
旧ソ連とキューバのハイブリッド的な作風。かつて外交や社会主義の共通項でつながっていた両国はソ連の崩壊によりキューバが深刻な経済危機に。舞台はその頃。監督も俳優陣もキューバ出身だが、宇宙船内の描写やアナログ感あふれるレトロでキッチュな美術(バナナのウォールデコが可愛い!)は旧ソ連製の映画を思わせる雰囲気があり、シュールなSFノリには「不思議惑星キン・ザ・ザ」等に通じるものも感じられ、宇宙を介することで二国の距離感がむしろリアルなものになっている。
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