ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスの映画専門家レビュー一覧

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

    ドキュメンタリーの巨匠F・ワイズマンによるニューヨーク公共図書館のドキュメンタリー。世界で最も有名な図書館である一方、市民の生活に密着していることでも知られる図書館の舞台裏にカメラを向け、働く司書たちの姿や、幹部たちの会議の様子を映し出す。
    • ライター

      石村加奈

      贅沢な205分の幕開けは、意表をついて、玄関ホールでのカジュアルなトーク企画から。「利己的な遺伝子」で知られるイギリスの進化生物学者リチャード・ドーキンス博士の「詩」という言葉が、作中じわじわと効いてくる。まさにワイズマンらしい映像詩!人が学び、集う館内での、実に知的かつ多種多様なシーン(行政に関する会議も含め)が「未来に図書館は必要ない」と言う乱暴な意見を一蹴する。中でも歴史ある黒人文化研究図書館は、図書館を活性化させる存在として印象的だ。

    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      ワイズマンが飽かずに試行してきたのは、ぶっきらぼうに編集されたロケーションがもはや映画でなくなる地点にまで達し、社会とか生活とか、より意義深いとされる実相へと登りつめたかに見せかけながら、じつはすべてが映画そのものにほかならないという壮大な霊的実験への参加呼びかけなのである。私たち観客は幽霊となって、人物のスピーチに耳を欹てつつ時にやり過ごし、時に彼らの肩越しに壁や窓外の光に思いを寄せる。この物憂げな快楽を知ったら、もうあとには引けない。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      相変わらずのワイズマン。堂々の205分。あわてず騒がずじっくりと、ニューヨーク市中の図書館と人間を撮りまくる。こちらもノンビリ眺めたものの、ちょっぴり退屈の虫が。前作「ジャクソン・ハイツ」には面白い人々が登場。何より街そのものの息遣いが感じられた。今回、出演の人たちは知的で学術的で。むろん描いてる内容には納得も共感もできるのだが、どうも胸の奥まで響かないもどかしさが。ちと常識の枠内に収まった気がして。にしても、もう少し観客の生理にもご配慮を。

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