サウナのあるところの映画専門家レビュー一覧

サウナのあるところ

    サウナの本場・フィンランド発のサウナ・ドキュメンタリー。美しい自然とともに、DIYによるキャンピングカー型や電話ボックス型などユニークなサウナが登場。様々な人たちがサウナで過ごす姿を通して、フィンランドの人たちのサウナの楽しみ方を垣間見る。2011年フィンランド・アカデミー賞(ユッシ賞)最優秀ドキュメンタリー賞受賞、ヨーロピアン・フィルム・アワード2010ノミネート作品。
    • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

      ヴィヴィアン佐藤

      フィンランドのサウナは憩いの場、告解の場、会議室でもある。この映画では、画面には映らない物語が生まれ語られ伝えられていく場であり、劇場そのものである。居合わせた人々は自分事として耳を傾ける。そして我々鑑賞者も一糸纏わずそのサウナに一緒に入っている錯覚に陥る。マスコミが描く平均的な幸福論ではなく、唯一無二の等身大の幸福論がそこでは展開される。フィンランドではオンカロという最終核処理施設が話題となったが、オンカロもサウナで語られたのだろうか。

    • フリーライター

      藤木TDC

      全篇オッサン全裸、具まる出しの自分語りを入場料相応とするか。ストレートの男性客には高いハードルだ。似た光景は近所の銭湯にもあるし。むろん中年男の裸身に美術性を感じたり、無害で悠長な映像詩に対価を認める価値観を否定はしない。作意の底に右傾化や徴兵への反発を感じたりもできる。だがサウナでクヨクヨ湿っぽい話ばかりするのが本場の流儀でもなかろう。オッサン世界標準のスポーツ話エロ話を排除し泣き言に絞り込む監督の美意識に共感できるか否かが満足度の指針。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      説明などの無駄を省いた構成によって、様々な語りに引き込まれる。登場する人物たちの取り繕っていない裸体は迫力があり、劇映画の美しい俳優に見慣れている目にはとても新鮮に映る。そして会話の重さ。特に苛烈な人生を送ってきたわけでもない人々にも、生きる上ではつらく苦しいことがある。誰にでも何かしら問題はあるけれど、「つらいのはお前だけじゃない」という言葉では切り捨てられない個々の痛みへのまなざし。フィンランドのサウナは汗とともに打ち明け話を吐き出させる。

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