星屑の町(2020)の映画専門家レビュー一覧
星屑の町(2020)
1994年から25年に亘り全7作が上演された、星屑の会による人気舞台『星屑の町』シリーズを映画化。売れないムード歌謡コーラスグループ『山田修とハローナイツ』のメンバーたちが、歌手を夢見るヒロイン・愛との出会いをきっかけに、人生が大きく変わり始める。出演は「笑顔の向こうに」の大平サブロー、TVアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のラサール石井、「この世界の片隅に」ののん。監督は「の・ようなもの のようなもの」の杉山泰一。星屑の会は、本作の原作・脚本を務める水谷龍二と、ラサール石井、小宮孝泰が、笑ってホロリとする作品を作ることを目指し結成したユニット。
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フリーライター
須永貴子
田舎娘の愛が、おじさんたちのコーラスグループに加入するまでに80分が経過していた。起承転結の“転”に至ってようやく、この作品の主人公が愛ではなくおじさんたちだと認識。愛にだけ回想シーンがあるなど、彼女の人物造形が厚くなり過ぎ、作品の主体がボヤけてしまった。駆け足で迎えた“結”での彼女の唐突な決断とおじさんたちの元サヤは強引。生の舞台では成立しても、映像ではもっと楽曲数と尺をシェイプしないとダルい。いろいろな点でバランスが悪いが、のんの変化に★を。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
タイトルからして郷愁を誘う。ベテラン脚本家による舞台は、シリーズ七作まで作られている。「山田修とハローナイツ」というコーラスグループに歌手を夢見る田舎娘が加わる。もうそれで話の流れが想像がつき、思った通りに展開する。定番なのが、なぜこんなに心地よいんだろう。心躍る安心感! 味のある役者が隅々に至るまで配されている。熟達の脚本に軽やかでセンスのいい演出。どんな時にも心がどこかに飛んでいるようなのんが異彩を放っている。とても気持ちいい映画を観た。
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映画評論家
吉田広明
25年間続くシリーズ演劇と言うが、さすがにキャラも作り込まれて危なげない娯楽作に。若い女子を入れる入れないでグループが険悪な雰囲気になり、各自の来歴や抱えるものが露わになってくる辺り、やはり映画は何かが崩れる所こそ面白い。岩手が舞台でのんを起用というキャスティングは安易だが、彼女の頸さで一本芯が通った感じ。ただし女子とおっさん集団の違和感は拭えず、せめて女子を昭和歌謡マニアとでもしておけば女子参加の不自然も歌手志望という動機の古臭さも払拭できた筈。
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