バーナデット ママは行方不明の映画専門家レビュー一覧

バーナデット ママは行方不明

「6才のボクが、大人になるまで。」のR・リンクレイターがベストセラー小説を映画化したヒューマンコメディ。一流IT企業勤務の夫と娘と幸せな毎日を送っているように見えた主婦バーナデット。ある事件を機に忽然と姿を消した彼女は、南極に向かっていた。出演は、「TAR ター」のケイト・ブランシェット、「秘密への招待状」のビリー・クラダップ、「ワンダーウーマン1984」のクリステン・ウィグ。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    リンクレイター作品は、緻密さと風通しのよさの両立ぶりにしばしば感嘆させられるのだが、これもそう。彼と組むことでケイト・ブランシェットが実現した人物像も素晴らしいし、にもかかわらず彼女ひとりが場を制するのではなく、共演陣と有機的にからみ合っているのもとてもいい。追い詰められたバーナデットが、意外な(でも確かにこれ以外ない)相手に救いを求めてから先は、涙なしでは見られないと同時に、冒険の予感で俄然心がわき立つ。あと、建築ファン目線からもたまらん映画。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    天才建築家と称された過去を持つ主婦バーナデットが極度の人間嫌いをこじらせ、突然南極大陸への旅に出る。主演ケイト・ブランシェット×監督リチャード・リンクレイターという魅惑のコラボはさぞや新たなワンダーを生み出すのではと予想していたのだが、映画は互いの良さを引き出すことなく、南極大陸の壮大な映像に救われながらも、凡庸な仕上がりだ。ブランシェットが地で演技しているかのようなフラットなキャラは、映画も彼女も活かさない。まさに「映画自体が行方不明」になってしまった。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    天才建築家でありながら職を捨て、創造しない日々を送るバーナデッドをケイト・ブランシェットが実に魅力的に演じている。彼女の語りはいつだって耳に心地良い。隣人オードリー役のクリステン・ウィグも素晴らしく、二人のセッションは緊張とユーモアの綱引きを見ているかのよう。行きたくなかった南極に自ら飛び込むことで自己を再発見する展開にカタルシスを味わえる一方で、夫の無理解が南極での再会によって何事もなかったことにされるのは少しご都合主義ではないかなと思ったり。

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