ブラ! ブラ! ブラ! 胸いっぱいの愛をの映画専門家レビュー一覧

ブラ! ブラ! ブラ! 胸いっぱいの愛を

「ツバル TUVALU」のファイト・ヘルマー監督が全編セリフを排して描く大人のファンタジー。女性たちが線路越しに洗濯物を干す住宅街を通る貨物列車の運転士・ヌルラン。定年を迎える日、彼が運転を終えると、青いブラジャーが列車に引っかかっていた。出演は、「アンダーグラウンド」のミキ・マノイロヴィッチ、「ポンヌフの恋人」のドニ・ラヴァン、「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」のパス・ヴェガ、「グッバイ、レーニン!」のチュルパン・ハマートヴァ、「パッション」のマヤ・モルゲンステルン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    オープニングでミシン音がレースやフリルを縫っていく。山々や集落を縫って走る鉄道はミシンで、大地は乳房、線路で囲われ覆われた地域はブラジャーそのものだ。乳房という自然の大地を、ブラジャーという鉄道で治めていく。人工の意識が被さることで、エロティシズムや女性性が生まれる。ブラジャー始め下着は女性の脱皮した抜け殻だ。繰り返し反復し想い出させる車窓からの光景は、映画のフィルムの一コマだ。そして、鉄道は弦楽器や打楽器だ。ルーセル的独身者の美学満載!

  • フリーライター

    藤木TDC

    ブラジャーと鉄道をモチーフにしたユニークな無言劇(サイレントではない)は象徴的に描かれるブラジャーの解釈が多彩にふくらむ。映画通には語りを喚起するだろうし、若い人にも刺激的な示唆を与えるはず。ユーモラスでエロチックな場面も多く男性観客を退屈させず、アゼルバイジャンのカスバのような家並みの軒先を都電もどきに通過する欧州横断列車に鉄道好きは垂涎するだろう。美しい映像による知的映画の見本だが、やや監督の自己愛が匂い立ち観客を選ぶ傾向を感じた。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    たわいない出発点なのは映画的に構わないが、しかし時代に逆行したこのテーマで一本撮りきるのかという驚きのまま物語は進む。男性が女性下着に抱く執着や、シンデレラの靴ならぬブラのフィッティングで持ち主を探す妄想は理解できるものの、そのワンテーマだけを具象化する企画の進み方に?然とする思いがある。性的欲望を可愛らしい演出で見せてしまう90年代的な感覚に、現代的な新鮮さを感じないのも苦しい。出演する女優たちはどういう心境なのだろうかと訝しく思う。

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