グランド・ジャーニーの映画専門家レビュー一覧

グランド・ジャーニー

鳥類愛好家の気象学者クリスチャン・ムレクの実話を、本人の脚本で映画化。フランスのカマルグで雁の研究をするクリスチャンは、思春期の息子トマと共に、超軽量飛行機を使って渡り鳥に安全な飛行ルートを教えるという無謀なプロジェクトに挑むが……。出演は「セラヴィ!」のジャン=ポール・ルーヴ。監督は「ベル&セバスチャン」のニコラ・ヴァニエ。ムレク自身が飛行・雁担当も務め、臨場感あふれる空の旅は、実際に野鳥たちと空を飛んで撮影している。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    映画芸術を豊かにし、その可能性を広げる作品ではないが、明瞭単純な展開の感動物語。脚本・演技・演出に嫌みはない。絶滅寸前の渡り鳥を救出という正義的な目的と父親を乗り越えるという成長物語。息子トマ役のルイ・バスケスの好感度が高い。ダメな父親には、妻と事務員と記者と三人の女性がおり、いつも彼女たちが救出する。野鳥がケージから自然へと放たれる引き換えに、父親は拘留という檻に入る。鳥たちが故郷ノルウェーに戻るように、「少年」へ戻った自分を見つけた。

  • フリーライター

    藤木TDC

    ハリウッド製「グース」(96年)と同題材のフランス+ノルウェー合作。夏休みにひきこもりの子供をスマホやゲーム機から引き離したい親の願いに寄せた家族アドベンチャー映画だ。主人公少年の冒険と成長は私でもウルウルする愛撫上手な演出だが、はたしてこの悠長な映像テンポでゲーム慣れした10代観客に魅力が届くか。また離婚した両親もスマホを手放せない依存性や、息子の成長を目にし夫婦のヨリが戻る様子は気持ち悪くもあり、オッサン目には商業主義的欺瞞を感じてしまう。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    人間関係の描写は取りこぼしなく、小慣れた手つきで生き生きと描かれていて文句はない。ただ、実話に基づく話なのでどうしようもないのだが、少年が渡り鳥と冒険をする出来事と結末は、当たり障りがなさすぎて面白みを感じない。当事者にとって大事件とはいえ、映画として観るにはもう少し旅の細部の演出に、遊びがあっても良いのでは。個人的には旅を巡る映画で、これまでに作られたいびつで魅惑的な作品群を前にして、ちょっといい話の本作をチョイスしないだろう。

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