わたしはダフネの映画専門家レビュー一覧

わたしはダフネ

2019年の第69回ベルリン国際映画祭でパノラマ部門国際批評家連盟賞を受賞した作品。ダウン症だが、明るく快活な性格の女性ダフネは、スーパーで働きながら、両親と共に平穏な日々を送っていた。ところが、母が亡くなったことで、彼女の生活は一変する。主人公ダフネを演じるのは、演技未経験ながら、facebook上で監督のフェデリコ・ボンディに見出されたカロリーナ・ラスパンティ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ベテラン俳優アントニオ・ピオヴァネッリ演じる父親役と同じく、演技初挑戦だというカロリーナ・ラスパンティが演じる、おしゃべりで社交的なダウン症の女性ダフネに翻弄され魅了され続ける一作。前向きで善意に溢れたダフネが周囲の人たちに影響を与え、彼女に還元されていく構図は、一種の錬金術のようにも感じられる。じんわりとしたラストシーンや、父娘で森を歩く道行きなども味わい深いが、物語は起伏が少なく単調に感じられる。とはいえ、ダフネが苦しむ姿は見たくないが……。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    思ったことを忖度なしで口にし、感情を抑制できず周囲に当たることも。その態度を高飛車に感じることも。30代のダフネを、ドキュメンタリーと錯覚するほどリアルにとらえる。いることが当たり前だった母の突然死によって、父との距離を嫌でも意識する彼女の、力強い個性がドラマを支配する。感傷や説明のエピソードは皆無だが、父が宿の主人に娘が生まれた時のことを語る場面、ダフネと森林警備隊員とのやり取りで浮かび上がる。父娘の旅は、次なる段階へ移る人生の通過儀礼とみた。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    最愛の母親に先立たれたダウン症の娘が父親の愛によって自立するお話かと思いきや、逆にショックで引きこもりになってしまった父親をしっかり者の娘が尻をひっぱたいて立ち直らせる物語であったことには地味に意表を突かれたし、このちょっぴり皮肉屋で理屈っぽく、しかしとてつもなくキュートで皆に愛されているダフネを演じたカロリーナ・ラスパンティの魅力が画面に溢れており、彼女の存在なしには成立しえなかったであろう映画で、ただ山道を歩く二人の後ろ姿に無性に感動した。

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