長沙里9.15の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
ワーナー・ブラザース・コリア製作の本作は、同じワーナーの日本でのローカルプロダクション作品とは違って、自国映画の独自な文体の開発ではなく、技術的にハリウッド映画の水準にいかに近づけるかを目標としているかのよう。その到達度において、本作は見事な仕上がりと言っていい。一方、ミーガン・フォックス、ジョージ・イーズらアメリカ人俳優への演出には工夫が見られないのが残念。鑑賞の際には、徴兵制のある国の作品であるという想像力を働かせた方がいいだろう。
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ライター
石村加奈
初めての実戦に駆り出された、平均年齢17歳、772人の学生兵の若さが眩しく、観る者の心に突き刺さる。母への愛情、家族の復讐、それぞれの思いを胸に秘め、必死で戦う若者たちの想像を超えた戸惑いが、説明台詞ではなく、作中何度か挿入される波のように、印象的な画で表現される。自分と同じ人間の死体を前に震える掌、友に自分の間違いを謝る時、帽子を脱いでみせるあどけない顔、亡き友から預かった手紙を母親へ届けに行く、覚悟の背中。戦争の酷さを突きつける、反戦映画だ。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
朝鮮戦争下、後に伝説となるクロマイト作戦。それを成功させる為の陽動作戦、長沙里上陸に向かう韓国軍部隊のほとんどがまだ10代の学生兵士。上陸前、完全に捨て駒に使われる彼らのまるで修学旅行のようなノリが微笑ましく、哀しい。イケメン(実は脱北者)、デブ、皮肉屋、実は女、など主軸になるキャラの設定がややベタだが、全てが物語にうまく機能している。若者たちのその目線は、戦争は普通の日常を送っていた人間同士が殺し合う歪んだ現実、ということをより実感させられる。
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