あなたにふさわしいの映画専門家レビュー一覧

あなたにふさわしい

別荘地を舞台に、2組の夫婦が離婚の危機に直面する様子を描いた群像劇。夫の由則に不満を抱く専業主婦の美希は、由則の仕事のパートナー、多香子とその夫・充と夫婦二組で5日間の休暇を別荘で過ごすことになる。だが、現地に着いた途端、問題が発生し……。出演は「カメラを止めるな!」の主題歌を担当した山本真由美、「ラプラスの魔女」の橋本一郎。
  • 映画評論家

    川口敦子

    え、そうなるの、そうするのと、予想外の言動をしらりと繰り出す専業主婦、平然ととんでもない一歩を踏み出す様(それも一度ならず)に、濱口竜介監督作の微かな影を感じたら「ハッピーアワー」に参加した高橋知由の脚本だった。ただ興味深さが習作の域に留まっている憾みも。真正面の顔の無言でものいう力など素敵な瞬間もあるのに説明的な表情に堕しがちなヒロイン以下、演技、人物像とも煮つめ切れずに終わっていて“運命の人/じゃない人”の主題も尻切れトンボ。残念。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「螺旋銀河」「ハッピーアワー」の脚本家・高橋知由のダイアローグの妙を堪能する作品。ただ、ことばの力に引きずられすぎたか、俳優たちの演技が終始段取りをこなしている風なのが気になる。それだけに、ふと無音になる瞬間、一人で押し黙っているときの表情がかえって印象に残る。せっかくのロケーション、その風景を写真に撮るというモティーフ、手紙のことば、もっと活かしてもよかったのでは。いまこのタイミングも手伝い、夫婦の距離を見据える視線には大いに同調した。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    貸別荘でともに休暇をすごす二組の若い夫婦と、もうひとり。どの役も下手すると自分が可愛いだけだとなりそうな危うさに対して、宝監督と役者たち、迷いながらも頑張ってなにか引き出したという感触。休暇中なのに仕事する二人が出たあとの、浮気関係にある二人の「弾み感」など、わるくない。脚本、高橋知由。彼が参加した濱口作品「ハッピーアワー」を思い出させる。いまあるものが自分にふさわしいかどうか。それぞれがまじめに反省して終わりということで、痛快さはない。

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