17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスンの映画専門家レビュー一覧

17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン

ブルーノ・ガンツが精神分析学者フロイトを演じたドラマ。1937年、ナチ・ドイツとの併合に揺れるオーストリア。田舎からウィーンへ出てきた青年フランツは、フロイト教授と知り合う。やがて、ある女性に一目惚れしたフランツは、フロイトに助言を求める。2012年にオーストリアで出版され、ベストセラーとなったローベルト・ゼーターラーの小説『キオスク』の映画化。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    17歳フランツと老齢フロイトの友情は、社会的な役割や職種、年齢を超えた関係。フロイトは知の巨人でありながら少年を導き、対等に語り合い、ときには忠告にも従う。戦争の足音が忍び寄ってはくるが、青年の社会への参加や反抗、恋愛や友情、決別はどの時代にでも起こることだ。ゼーターラーは大文字の国家の大袈裟な歴史としてではなく、等身大の誰にでも降りかかる戦争をも描いた。遺作であるガンツのフロイト像は、知識人でありながら迷い続ける人間味溢れる解釈だった。

  • フリーライター

    藤木TDC

    お行儀よい美少年ファンタジーは中年男の私に難癖を多くさせる。たとえば開戦前の話なのに戦後史観にもとづき一面的にナチスを悪とする脚本は安直ではないか。ナチス・ドイツのオーストリア併合は当初は墺国民の支持もあり、まして主人公のような若く貧しい地方出身者は出自の似たヒトラーに憧れておかしくない。また何度も性夢を描きながら朝に夢精したパンツを洗う場面がないのは大きな欠落でフロイト登場の意味が褪せる。17歳男子の青春はもっと無知で野蛮でなくては絵空事だ。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    夢想的なシーンの独特さ、なまめかしさが秀でていて心惹かれるゆえ、逆に通常のドラマパートが平凡に見えるバランスの悪さがある。フロイトの導きもどうってことのない青春期の過ごし方なので、心理学の面で期待すると肩透かし。ナチスによる軍靴の響きが聞こえるウィーンの鬱屈やきな臭い描写は、反戦映画であるのを強烈に打ち立てているが、ウィーンとナチの関係を描いた作品として突出しているわけではない。青春と戦争がうまく?み合わず別問題として展開してしまう。

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