れいこいるかの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
川口敦子
「ろんぐ・ぐっどばい」も撮ってるいまおか監督だけに「悲しい時に笑うって手もある」としらりと語ったアルトマンの心を射ぬく新たな快作を放ってくれた。悲しみはよく晴れた日の白い光の底にこそ染みている。震災で子を失くした夫婦のその後。それぞれの歩み。ドラマがある所をこそあっさりと描くこと。その美しい自恃がボディブロウのように効いてくる。時の軽やかな重み。省略の雄弁。ウルトラセブンの破調。いずれも界隈の人の記憶と共に心に降り積もる。くり返し見たいと思わせる。
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編集者、ライター
佐野亨
ほぼ毎日更新されるいまおかしんじ監督のブログを何年も読みつづけている。近所のファミレスで、喫茶店で、なにを食べたか、なにを飲んだか、考えたかが簡潔に綴られているだけなのだが、だからこそそのことばの後景に無限の世界が広がっていく。海や居酒屋や水族館などひとつひとつの風景がただの風景として、つぶやきや会話や俳句などひとつひとつのことばがただのことばとして流れゆく、その後景に惨禍の記憶がじわじわとにじみ出す。いまおかしんじにしか撮れない映画。
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詩人、映画監督
福間健二
本作は、いまおか監督がずっとやりたいと思ってきたものだが、脚本家佐藤稔の個性と趣味がまさって出ている気もする。それで困らないのも、いまおか的カッコよさだ。神戸の震災以後とそれを飲み込む世の変化への、根本で譲ってない「受け」の姿勢。武田暁の演じるヒロイン伊智子がそれを体現する。普通のおばさんになりながら苦も楽も知る「一代女」の貫祿。河原秀俊の太助も泣き笑いのなかに低い位置から筋を通す。老若男女、飲む場所、街。去るものを追わない神戸、いとしい。
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