ファナティック ハリウッドの狂愛者の映画専門家レビュー一覧

ファナティック ハリウッドの狂愛者

    J・トラボルタが狂気に満ちたストーカーに扮したスリラー。ハリウッド大通りのパフォーマーのムースは、人気俳優ハンター・ダンバーの熱狂的なファン。しかし、念願かなって参加したサイン会で冷たくあしらわれたことから、ムースの愛情は次第に歪んでいく。出演は、「ファイナル・デスティネーション」のデヴォン・サワ、ドラマ『デグラッシ:ネクスト・クラス』のアナ・ゴーリャ。監督は、「奇跡のロングショット」のフレッド・ダースト。
    • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

      ヴィヴィアン佐藤

      古くは「サンセット大通り」、「マルホランド・ドライブ」、最近では「アンダー・ザ・シルバーレイク」などハリウッドという土地固有のメディア亡霊に取り憑かれた男。幻影と現実だけではなく、価値と無価値、善と悪、演者と鑑賞者の境界は消失。鑑賞者の方がドラマティックで映画の題材と化す。自身の身体性も希薄となり誰もが離人症。自分の肉体を引き止める唯一の処方は耳の垢の匂いを嗅ぐこと。そこが唯一のリアリティへの命綱だ。昨今のマスク手放せない習慣も身体的安心か。

    • フリーライター

      藤木TDC

      「ジョーカー」と「Mr.ビーン」を混ぜたら最悪の味になった風のひどい出来。2019年ラジー賞主演男優賞受賞は実にふさわしく、中身はそれ以上に最低だ。トラヴォルタ66歳が演じるナイーヴなB級映画ファン像は私自身同類のオタクとして怒りを覚える意地悪い造形だし、現在の社会規範では容認されない偏見を助長する描写があり、悪質ないじめを戒めも弱者の復権もなく放置する無神経さに胸くそ悪くなる。ドナルド・トランプの頭の中を覗くような不快なアメリカ映画。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      これは一体なんだろう。もし作り手が客観性を持っていたなら、この登場人物たちの相関関係はコーエン兄弟が描くように奇妙な味を生み出したかもしれない。だが本作は迷惑な人が他の迷惑な人と出会い、物語として都合のいい化学反応が起きて不幸な?末になっただけに見える。そもそも変人が二人という偶然性も、珍奇なストーリーテリングに思える。ストーカーの映画はこれまでにも作られてきたが、このラストは同情できず、しかし陰惨すぎて心の落ちつきどころがない。

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