ホモ・サピエンスの涙の映画専門家レビュー一覧

ホモ・サピエンスの涙

「さよなら、人類」のロイ・アンダーソン監督が第76回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞したドラマ。構図・色彩・美術と細部まで徹底的にこだわり、33シーン全てをワンシーンワンカットで撮影。悲しみと喜びを繰り返す人類の姿を優しい視点で映し出す。第20回ダブリン国際映画祭ダブリン映画批評家協会賞、最優秀監督賞、第55回スウェーデン・アカデミー賞美術賞、第32回ヨーロッパ映画賞視覚効果スーパーバイザー賞ほか多数受賞。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    33章の人類のエピソードは喪失や欠落、失望の物語だけではなく、たまには喜びや希望もある。人の感情は喜怒哀楽で分割できるものではなく、それらは総て同時に起きる。しかもそれらは割合が異なり、刻々と変化していくのだ。そしてただの4個の感情には到底収まらない。歯痛や精神的な悩みは、他人には痛くも痒くもない。しかし、これらの人類の感情の見本陳列ケースは、見る者の経験やその日の状況によって響き共鳴する。これは不在の神によって織り上げられた現代の聖書だ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    北欧の奇才の久々になる意欲的新作を「つまらない」と腐すのは勇気がいるが、正直、何度か寝落ちしてしまった。美しい構図で絶望する人間の様態を点描した一枚絵の展覧会。オチのない『ゲバゲバ90分』(古すぎ?)というか、他人の悲しみが生む傍観者(観客)の微細な喜びを小話の連続から検証する感情実験、といえば紹介にはなるか。観賞後しばらくして何かがジワジワくるのは確かだが、それだけでは……。何年か後には気が変わって評価するかもしれないが、今は薦めない。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    いつもながらのアンダーソン節。美術も演出も前作からの続きのようで基本的に変わりない。ただこれまではもっと突飛な設定や、静謐とはいえ登場人物に動きやうねりもあった気がするので、本作は一連の作品の中だるみか。ただでさえ静止画のような映画なので、演出が落ち着いてしまうとダイナミズムに欠けて吸引力が減少する。もちろん元々の世界観が秀逸で、美術も空間造りもずば抜けているから見応えはある作品なのだが、アンダーソンに対するハードルが上がっていたかも。

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