AWAKEの映画専門家レビュー一覧

AWAKE

第1回木下グループ新人監督賞グランプリ受賞作の映画化で、山田篤宏の商業映画デビュー作。かつて奨励会で棋士を目指しながらも、ライバルの陸に敗れ、夢を諦めた大学生の英一はある日、コンピュータ将棋に出会い、そのプログラム開発にのめり込んでいく。出演は「青くて痛くて脆い」の吉沢亮、「愛がなんだ」の若葉竜也、「素敵なダイナマイトスキャンダル」の落合モトキ。
  • 映画評論家

    北川れい子

    いまいち素っ気ないタイトルは将棋AIの名。かつてプロの棋士を目指したというその開発者をモデルにして、主人公の内面的揺れを行動で追っていくのだが、将棋盤やコンピュータ相手の寡黙な場面がかなり多い。が小細工のない吉沢亮の演技と腰の据わった演出が、主人公のある種の屈折した野心を感じさせ、この辺り、みごと。終盤の電王戦では棋士とAI双方の緊張した息使いまで手にとるよう。開放感や達成感とは別の、ある種の充実感が体験できる、野心的な作品である。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    人目を引く題材を若者たちの青春群像劇に律義に落とし込んでみたという感じだが、参照先がいくらでも探し出せそうな型の上に制作体制的にもお膳立てが整いすぎたと見え、山田監督にとって商業映画第1作でありながら、定石を踏み越えるような躍動の瞬間が一度も訪れない。その結果、若い俳優たちの熱量ばかりが空回りしてしまっている。「好きなこと」を題材とするのはもちろん大切なことだが、それを形にするときに自分の持っている知識を疑うような自己言及性があってほしい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    将棋で棋士とコンピュータがたたかった「電王戦」から着想した作品。藤井聡太登場以来の本物のおもしろさに対して、負けない要素を、元奨励会員がコンピュータのプログラムを開発したという事実から引き出している。新人の山田監督、プログラミングにのめりこむ吉沢亮の主人公をライヴァルとするくらいの熱意でやったと思える仕事だ。あえて盛らない。音楽もシンプル。でも、自分を出している。何よりも、主要人物それぞれの演技の基本がしっかりしている感じが気持ちよかった。

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