エイブのキッチンストーリーの映画専門家レビュー一覧

エイブのキッチンストーリー

少年が手作り料理で家族の絆をつなぐ感動のドラマ。イスラエル人の母とパレスチナ人の父を持つ12歳のエイブは、文化や宗教の違いから対立する家族にいつも悩まされている。そんななか、世界各地の味を掛け合わせたフュージョン料理のシェフ、チコと出会う。出演は、ドラマ『ストレンジャー・シングス』のノア・シュナップ、「シティ・オブ・ゴッド」のセウ・ジョルジ。監督は、ブラジル人のフェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    『ストレンジャー・シングス』のノア・シュナップに『ブレイキング・バッド』&『ベター・コール・ソウル』のマーク・マーゴリスという二大傑作テレビシリーズの出演陣の顔合わせ。アメリカ資本の入った作品では久しぶりの出演となるセウ・ジョルジにYouTubeで台頭したブラジルの映像作家。そんな座組のフレッシュさが、そのまま作品の仕上がりに反映されたいわゆる「フィールグッド・ムービー」。パレスチナとイスラエルの対立を「どっちもどっち」的に描いている点は大いに疑問。

  • ライター

    石村加奈

    「アーニャ~」とは一転、ノア・シュナップが、ブルックリン生まれのエイブ少年のいまを軽やかに生きる。ブラジル人のストリートシェフ・チコ(セウ・ジョルジ)の、なにに惹かれて、どのような交流を育んでいったのか? など内面を深堀りせず、12歳の少年の日々を淡々と綴っていく。エイブが見つけた真実は彼だけのものだと言わんばかりの、風通しのよさがいい。本音を抑え切れずにエイブを傷つけてしまう祖父ベンジャミンを、マーク・マーゴリスが上品に演じていて流石だなあ! と。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    パレスチナ系の父とイスラエル系の母の間に生まれブルックリンで育った12歳のエイブ(でありイブラヒムでありアブラハム)の日常がSNSの投稿を通して描かれる冒頭が秀逸。そこから彼の“複雑な世界”に入り込み、辛辣な言葉が飛び交う親族間の諍いに心を痛めて、得意の料理を使って行動を起こす彼の姿にどんどん心動かされる。フュージョン料理をこのテーマに重ねるのも上手い(お前の作ったものはフュージョンではなくコンフュージョンだ、という師匠チコとのやりとりも)。

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