家なき子 希望の歌声の映画専門家レビュー一覧

家なき子 希望の歌声

19 世紀に発表され日本でも何度もアニメ化されたフランス児童文学を、フランスを代表する俳優ダニエル・オートゥイユらの出演で映画化。義父に旅芸人の親方ヴェタリスへ売り飛ばされたレミは、ヴェタリスに歌の才能を見出され、一座と共に波乱万丈の旅に出る。監督は、「プレデターズ エヴォリューション」のアントワーヌ・ブロシエ。ダニエル・オートゥイユが情の深い旅芸人の親方を演じるほか、「ニュー・シネマ・パラダイス」のジャック・ペラン、「引き裂かれた女」のリュディヴィーヌ・サニエらが出演。日本語吹替版には、「ライオン・キング」(2019)で子供時代のシンバの声を担当した熊谷俊輝や、声優・俳優の山路和弘らが参加。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「家なき子」のような児童文学の古典が繰り返し映像化されることには意味があるのだろうし、リュック・ベッソン組の撮影監督ロマン・ラクルーバによるコントラストの強いクリアな映像は、作品世界を壊すことなく若い世代にとっても馴染みやすい現代風のルックを与えることに成功している。しかし、原作の「優れたダイジェスト」以上のものだとは思えず、自分のような観客のための作品ではないということを差し引いても、映画としてどこを評価したらいいのかわからない。

  • ライター

    石村加奈

    140年以上も語り継がれる原作を脚色するにあたって、語り手レミ(ジャック・ペラン!)やリーズの設定変更など巧みだ。レミの歌声に、天賦の才を与えたことで、ヴィタリス(ダニエル・オートゥイユ)との天才音楽家同士の親交が深まり、2カ月に及ぶヴィタリスの投獄を待ち続けた、レミの健気さを支えている。ロンドンの雪の描写が絵本のように幻想的。原作では山あり谷ありだった長旅のスリルが、映画では平たく、ラストの希望に向かって、直線的に描かれているのは少し味気ないが。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    原作の長い物語を新たな解釈を加えつつ魅力も損なわず2時間弱にまとめていて、アニメ版(東京ムービー新社制作)の影響もヴィジュアルイメージに強く出ている。レミに歌の才能があるというのが一番のオリジナル要素だが、演じるマロム・パキンのその歌声、ルックスも含めたハマり具合は奇跡的で、素直に彼の冒険に一喜一憂してしまう。ダニエル・オートゥイユ(ヴィタリス)、ジャック・ペラン(壮年期のレミ)の存在が大人のビターなドラマとしての側面を担い、深い余韻を残す。

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