ニューヨーク 親切なロシア料理店の映画専門家レビュー一覧

ニューヨーク 親切なロシア料理店

「ワン・デイ 23年のラブストーリー」のロネ・シェルフィグが監督、事情を抱えNYに逃げてきた母親が見知らぬ人々の優しさと出会っていく人間ドラマ。潰れかけた曲者揃いの老舗ロシア料理店に、2人の子供を抱え無一文で逃げてきたクララが飛び込んでくる。子供と共に無一文で逃げてきたクララを「ルビー・スパークス」のゾーイ・カザンが、料理店のオーナーを「マイ・ブックショップ」のビル・ナイが演じるなど、実力派俳優が集結。第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門・オープニング作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    大都会が舞台の群像劇というスタイルが物語る役割はいささか古典的とも見えるが、良質な映像と音楽は秀逸。連想された画作りは、まさかのトルコのN・B・ジェイラン。このデンマーク・ドグマ95出身のシェルフィグ監督とは奇しくも同い年。教会の赦しの会や公の図書館、炊き出しの食堂、裁判所の吹き抜け、天使が佇んでいるような奇跡の光が印象的だ。高層ビル群の間の空き地に漏れ出したクラシック音楽が媒体となり、人々を結ぶ。光と音で充溢された「余白」の描写に脱帽。

  • フリーライター

    藤木TDC

    家出した母子、もと受刑者、孤独な独身者などネガティヴ要素を抱える男女(ただし美男美女)による「負け組」目線で描いたNYC舞台のトレンディドラマ。ご都合主義や不整合も感じるけれど、クラシカルな画風やゆったりした編集の「古き良き映画」タッチは中高年観客には悪くない感触だ。しかし結婚や恋愛から痛みを受けた者たちが、無反省に恋愛に回帰する結末は私には信じがたかった。私が男のせいか、ヒロインのDV夫にも少しは釈明させてほしいと思ったりも。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    個性派の良い役者を揃え、みんなそれらしいキャラを割り振られつつも、誰一人想像は超えず弾けないという無味。これは演出がこぢんまりしてしまっているからだろう。中心となる「夫のDVから息子二人を連れてニューヨークに逃げてきた人妻」という設定以上のものはなく、群像劇なのに役者のアンサンブルもほとんどないのは惜しい。それぞれの物語に厚みや魅力的な密度が欠けており、展開も緩慢で、各シークエンスの頭とお尻が間延びしているので無駄に尺を稼いでいる。

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