ソング・トゥ・ソングの映画専門家レビュー一覧

ソング・トゥ・ソング

「天国の日々」のテレンス・マリックが手掛けた豪華キャスト共演のラブストーリー。音楽の街、オースティン。フリーターのフェイ、大物プロデューサーのクック、売れないソングライターのBV、夢を諦めたウェイトレスのロンダ。4人の男女の人生が交差する。出演は、「LION ライオン 25年目のただいま」のルーニー・マーラ、「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング、「X-MEN」シリーズのマイケル・ファスベンダー、「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマン。また、リッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど様々なミュージシャンが出演する。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「名もなき生涯」のような作品を監督する一方、その同じ年に亡くなって間もないリル・ピープのドキュメンタリー映画のエグゼクティヴプロデューサーを買って出たりするテレンス・マリック。世間に流布するイメージとは異なるその俗っぽさは心得ているつもりだったが、それにしても本作の俗っぽさにはのけ反ったし、帳尻合わせ的な着地にも笑ってしまった。白人の特権性や欺瞞を隠そうともしないその潔いスタンスは、今やアメリカ映画では貴重だ。良くも悪くも。

  • ライター

    石村加奈

    この既視感、何だっけ? と思えば、「聖杯たちの騎士」(15)のマリック&ルベツキコンビ作だった。タイトル通り、まさに音楽を聴くように、感情の赴くまま、作品世界に身を任せて、感じることで、一体になれる、独特な映画である。パティ・スミスやイギー・ポップら、本物のミュージシャンたちが大勢出演し、趣向を凝らした音楽の中で、マーラーやボブ・ディランの使い方が面白い。メキシコ(?)の海で戯れる男女3人夏物語に、物乞いの老婆を挿むくだりに、ルベツキの手腕が光る。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    ルベツキのエモーショナルな映像、俳優たちの自由な演技、そして自己対峙のポエティックなモノローグ――冒頭からお馴染みの手法で「関係性の本質」をあぶり出すマリック節全開。8時間あった(らしい)最高の素材は、全篇、浮遊し絡み合うように断片的に繋がれ、観る者を翻弄し続ける。音楽業界に生きる人々を描くために、実際の野外フェスで撮影し、有名音楽家も多数出演しているが(P・スミスの言葉が泣ける)、リアリティは感じられず、贅沢なエチュードを観ているような感覚に。

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