サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイスの映画専門家レビュー一覧

サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス

1993年に亡くなったミュージシャンのサン・ラーが脚本・音楽・主演を務めたSF映画。製作から半世紀を経て、81分オリジナル版を日本初公開。大宇宙議会・銀河間領域の大使サン・ラーは、音楽を燃料に宇宙を航行する中、理想の惑星を発見するが……。共演は「ダブルチェイス/俺たちは007じゃない」のレイ・ジョンソン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    これは凄すぎる。「超越」しか相応しい言葉は見当たらない。アフロフューチャリズムを根底に、サイエンス、ユートピア、宇宙時空間、社会批評をフリージャズという魔術で料理してみせた。いや逆だ。フリージャズと呼ばれる音楽の一ジャンルを様々なファクターで分解して見せた。ケネス・アンガーばりの描写もあるが、たとえばJBのステージには惑星の配列、北島三郎のそれにはキングギドラが登場といった、有無を言わせない超越した異次元性。そして昨今の米社会にも響く批評性。

  • フリーライター

    藤木TDC

    カルト的ジャズ奏者サン・ラーのファンには輸入VHS時代から人気だった74年製作のチープでサイケなブラックスプロイテーションSF映画。劇場公開は今さら感もあるものの、字幕付きを大画面・大音量で観られるなら意義は感じる。深夜にアルコール+αの入った体調で観ないと満足を得にくい内容ゆえ、夜間営業自粛のもと日中、素面で観賞するのは作品にとっても不幸。上映館はケチケチせず彼の主張と音楽の記録映画「サン・ラー/ジョイフル・ノイズ」と2本立て公開してほしい。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    自分を土星からの使者と言い、不思議キャラクターで押し通した自意識の塊のアーティストなわけだが、音楽もこの映画も普通に楽しめるのがサン・ラーの良いところだと思う。もちろんシュールな独自の哲学が勝っているものの、端々の演出が卑近でとっつきやすい。ヤバくないホドロフスキーにルチャシネマ風味とでもいうべきか。手作り感覚のSFテイストは癒し要素も持っている。黒人という鋭利なテーマを掲げつつも、それを表現する方法がブラックスプロイテーション映画で楽しい。

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