ターコイズの空の下での映画専門家レビュー一覧

ターコイズの空の下で

「泣くな赤鬼」の柳楽優弥の海外合作映画初主演映画。裕福な家庭に育ち、自堕落な暮らしを送っていたタケシは、大企業を経営する祖父・三郎の競走馬を盗んだモンゴル人アムラとともに、終戦後に生き別れとなった祖父の娘を探すため、モンゴルを旅することに。第68回マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭国際映画批評家連盟賞、才能賞ダブル受賞。出演は、近年ハリウッドにも進出したモンゴル人俳優のアムラ・バルジンヤム、「ゴーストマスター」の麿赤兒。音楽・ファッション・アート業界でPVやドキュメンタリーの制作を手掛けてきたKENTAROによる初の長編映画監督作。
  • 映画評論家

    小野寺系

    長篇初監督という事情を加味しても擁護しづらい出来。いまどき日本とモンゴルを、都会と田舎という見方で分けている世界観が単純で時代遅れだし、世襲で大企業のトップに立とうという、そもそも共感しづらい主人公が数日モンゴルに行っただけで人間的成長を迎えるという内容を、説得力をもって描いているシーンがどこにも存在しない。大自然の風景には心洗われる瞬間もあるが、コントラストを極端に強め中間色をぶっ飛ばす調整は不自然で、お世辞にも美しく撮っているとは言い難い。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    モンゴルのどこかで生きているはずの、老境の男の娘を探す話を予測させる始まりから、その男の孫が自分探しをするというストーリーの移調にいささかまごつく。けれど孫役の柳楽優弥が、放蕩暮らしに浸る冒頭から一転して、モンゴルに舞台が移ると即興を伺わせる演技で、生き生きし始める。やはりこの俳優には即興的な演出がぴったりくる。映画の起点の娘を探す話が、ストーリーにもう少し絡んで欲しいと思うが、息を飲むほどに美しい映像にまごつきは溶解。まさにターコイズ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    いきなりの麿赤兒のドアップという幕開けはインパクト大で、続く近未来SFのようなスタイリッシュな酒池肉林シーンも下手すると上滑りしてしまう危ういラインを攻めており、的確に光を捉えているカメラと遊び心のある音響などにも映画的センスが感じられるのだが、以降の物語は意外なほどオーソドックスに展開してゆき、柳楽優弥扮する道楽息子がはなから人間的余裕を与えられた魅力的なキャラクターであるがゆえに、この男の成長譚として観るとやや平坦で物足りなく感じてしまう。

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