夏時間の映画専門家レビュー一覧

夏時間

第24回釜山国際映画祭で4冠を獲得したユン・ダンビ監督による長編デビュー作。夏休みのある日、10代の少女オクジュは、父、弟と共に緑が生い茂る大きな庭のある祖父の家に越してくる。だがそこに母の姿はなく、どこか居心地の悪さを感じながら暮らし始める。出演は、本作がデビューとなるチェ・ジョンウン、「私と猫のサランヘヨ」のパク・ヒョニョン。
  • 映画評論家

    小野寺系

    韓国の新人女性監督による少女の日常をとらえた初長篇作品ということで、「はちどり」と比べる向きもあるが、こちらの映画は新時代の波というより、90年代の日本映画を想起させる雰囲気で、ちょっと大人しい。少女の弟の即興ダンスが家族をなごませる場面の面白さや、決定的な場面に居合わせられない主人公を映し出す描写など、おそらく実体験に基づく説得力ある表現が見られるのは素晴らしく、強いテーマと表現力を身につけられれば、大きく化ける可能性のある監督だと思われる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    最近の韓国映画で10代の少女の視点では「はちどり」の孤独が記憶に新しいが、この映画のオクジュは家族の存在が重い少女。祖父、父、弟、叔母。それぞれの生活をリアルに描写しているだけに、どれをとっても関わりが彼女には鬱陶しい。例えば、同級生の男の子とは普通に話しているのに、父親と車に乗っているシーンでは目を合わせない。この効果的、かつ秀逸な心情描写には感心させられる。三世代家族の中の少女の夏時間は切り口の巧みさで、懐かしさとともに忘れていた痛みも体感させる。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    子供の頃の夏休みに親戚やおじいちゃんの家に行ったときの非日常な楽しさと居心地の悪さがないまぜになった何とも名状しがたい感情が蘇ってくる映画で、デビュー作にしてこの空気を画面に焼き付けることに成功しているのは立派だと思うも、それだけで押し通せるほどの凄みは感じられず、やりすぎない抑えのきいた演出にある種の小賢しさを感じてしまったのも事実で、こういう作品が「イイ映画」のアイコンになってきている気がするシネフィル界隈には僅か反発の思いが芽生えている。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事