ロード・オブ・カオスの映画専門家レビュー一覧

ロード・オブ・カオス

ノルウェーを代表する悪名高きメタルバンド“メイヘム”の狂乱の青春を描き出す音楽ドラマ。ノンフィクション『ブラック・メタルの血塗られた歴史』を原作に、世界のメタルシーンを席捲したその音楽と、数々の事件を引き起こした陰惨で猟奇的な彼らの闇に迫る。出演は「コロンバス」のロリー・カルキン、「HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ」のエモリー・コーエン。監督・脚本は「ホースメン(2008)」のジョナス・アカーランド。劇場公開に先駆け『トーキョーノーザンライツフェスティバル2020』にて上映。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    映画史に何も影響しない作品だが、北欧のデスメタルという、ほとんど知られていないカルチャーに光を当てていることで、とても応援したい。青年たちの王国内で暴走する権力闘争やエスカレートする暴力の様は、『蠅の王』を彷彿させる。『蠅の王』では豚の生首を旧約聖書に登場する悪魔ベルゼブブに擬えている。本作にも豚の首が登場するが、そのオマージュか。ロリー・カルキン扮する実際は孤独な主人公。兄が演じた「パーティ・モンスター」とほぼ同型の物語という事実が興味深い。

  • フリーライター

    藤木TDC

    近年では突出した残虐描写とサブカル映画のB級な軽さを併せ持ち、しかも殺人事件実話という希有な構造が魅了する。メタルファンには有名な事件だが、犯人のひとりが存命のため映画化が難しかった題材だ。悪魔崇拝を標榜するバンドが自ら作り出した世界観に追いつめられる様を皮肉な笑いを交え淡々と描き、純粋な動機が邪悪な破壊行動へ一転する文化創造の麻薬性を教える。現実のメイヘムの音楽評価を低く描きすぎメタルの人々に評判が悪く、演奏シーンも確実に足りないのが残念。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    冒頭でメイヘムの始まりを、編集で処理をしつつ紹介していくあたりのコミカルさが、ムードから浮いていてむず痒い。人の出入りが激しすぎて処理も追いついていないのに対し、本筋になると物語や演出が緩慢で停滞する。自殺や殺人の描写も、その緩慢さのままで演出しているので、非常に丁寧に死の模様をカット割りを重ねて長々と見せる。個人的にはこれらが一番良いシーンだったが、残酷さに抵抗感のある人も多いだろう。見栄や屈辱、憎悪が互いに高まっていく心理模様が興味深い。

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